橋本裕の日記
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2001年02月22日(木) 俳句の楽しみ

 以前に福井に帰省した折り、母の俳句の載っている新聞を見た。

   老いてなほ燃ゆるものあり深紅葉

 いい句だなあと感心して、はっと思い当たった。これは以前に私が雑誌の投句欄で見つけて、感心したので母に教えた句ではないか。母はそのことを忘れて、自分の句だと思って投稿したのだろうか。

 新聞を見ながら、このことに気付いたものの、母には言わなかった。せっかく句が採用されて、素直に喜んでいる母の気持ちに水を差す気になれなかったからだ。それに、自分の句と思い込むほど、この句に愛着を持っている母がなんだか愛おしかった。

 俳句が好きなのは私の家系らしく、私の父も若い頃俳句を嗜んで、俳号も持っていたようだ。もっとも、父の自信作というのがこれまた芭蕉の句にそっくりなので、これは盗作ではないかと疑ったが、あえて指摘しなかった。そんなことで親子の仲が剣呑になってはいけないと思ったからだ。

 さて、私自身も俳句や短歌を作るが、どれも我流でいい加減なものである。ごく親しい人にはワープロで作ったあやしげな句集や歌集を配ったりしたことがあったが、今読み返してみると恥ずかしいほどの駄作で、回収して回りたくなる。

 そんな恥ずかしい思いをしながら、相変わらず作り続けるのは、やはり俳句好きの血が私の中に流れているからだろう。好きなものは好きなのだから仕方がない。

  クロッカス花弁の底に清水かな
  つむじかぜ少女の足の白さかな
  かなしみを捨つるがごとく衣脱ぐ


橋本裕 |MAILHomePage

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