橋本裕の日記
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2001年02月24日(土) |
なんでもないから好き |
俵万智さんの短歌を「サラダ記念日」からいくつか引用しよう。
思いでの一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ 潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き
俵万智さんの短歌の持つこの「なんでもない軽さ」が好きである。ついでに「かぜのてのひら」からも好きな歌をひとつ引用しておこう。
ぎこちない父との会話 茶柱が立てばしばらく茶柱のこと
芥川龍之介が「言葉は辞書の中にあるときよりも文章の中でより美しくなければならない」という意味のことを書いている。言葉そのものは抽象的な存在でしかない。しかし、それを組み合わせてつくられる世界はたんなる抽象物ではなく、それを形作った人間の息吹を帯びている。
ほんとうに普遍的なものは個性的であり、ほんとうに個性的なものは普遍的である。それは個性的であると同時に普遍性を持っている。俵万智さんの歌集をひさしぶりに広げながら、とりとめのないことを考え、なんでもない世界に遊んでみた。
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