橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2001年04月07日(土) 中年クライシス

 殺人事件の容疑者数の統計を見ると、一番殺人事件を起こしているのは49歳だそうである。警察庁が調べたところ、5年間で殺人事件で検挙された49歳は185人で、すべての年齢を通じて最も多かった。続いて47歳が164人、48歳が160人、45歳が159人で、40代後半が目立つ。

 過労死や自殺など中高年問題を扱う専門家たちは、老後への不安、仕事や家庭でストレスを感じ、人生の岐路に立つ不安定な世代であることが背景にあると分析している。たとえば、河合隼雄さんの「中年クライシス」という本を読むと、こんなことが書いてある。

「中年の危機は思いがけないときにやってくる。同輩の誰よりも先に課長になり、出世頭と見られていたエリート社員が突然に自殺する。やっと新築の家ができて、皆から祝福されているとき、その家の主婦が抑鬱症になってしまう。事故、病気など、思いがけないことが、平穏であるべき中年を直撃するのである。私は職業上、そのような人や、家族にお会いし、『中年の家』が崖の下に立っている姿を思い起こすのである」

「中年とは魅力に満ちた時期である。それは強烈な二律背反によって支えられているように思う。男と女、老と若、善と悪、数えたてゆくときりがないが、安定と不安定という軸で見ると、これほど安定して見えながら、内面に一触即発の危機をかかえているように感じれれる時期はないだろう」

 警視庁の統計は、もともと青年期の犯罪を分析するために作られたのだという。ところが浮かび上がってきたのは、「凶悪な中年」の姿だったわけだ。しかし、私にはもう一つ見落としてはいけない統計があると思う。それは自殺率の統計である。

 自殺率でも殺人の発生率と同じ傾向がみられ、中年は異様に高水準である。日本は世界では自殺の多い国に入る。しかも、自殺率は毎年上昇しつつある。日本は世界一平和で安全な国だというが、その内実はかなり厳しい。そもそも年間3万人以上の人々が自殺をする国が「平和で安全な国」だと言えるのだろうか。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加