橋本裕の日記
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2001年04月11日(水) 何のためにお金を稼ぐのか

 日本はお金の使い方が下手だ。何のためにお金を稼ぐのか、肝心のビジョンを持っていない。ただ儲けるに儲けるというのでは、お金の奴隷である。エコノミック・アニマルと軽蔑されても仕方がない。

 いうまでもなく、お金は使うためにある。お金を稼いだ後、それを何に使うか、その使い方でその人の在り方が決まる。お金を儲ける能力も大切だが、ただお金儲けがうまいというだけでは誰も尊敬しない。お金を使う能力の方がもっと重要なのだ。

 たとえばマイクロソフトの創業者で、世界一のお金持ちのビル・ゲイツが、「財産の95パーセントは寄付する。家族に残すのは5パーセントで充分」と言っている。そして彼は奥さんと一緒に「ビル&メリンダ財団」をつくり、最近も米カリフォルニア州に住むラテン系アメリカ人の子どもたちのため、チャータースクールのネットワークをつくるプロジェクトに対し、675万3000ドルを寄付する支援活動を行なっている。

 アメリカの資産家は、慈善授業のために私財を使うことは当然の義務であり、こうした社会的責任をはたすことに生き甲斐を感じているようだ。たとえばアメリカの実業家で、鋼鉄王と呼ばれたカーネギー(1835〜1919)は66歳の時、所有する製鉄所の株をすべて売り払い、三億五千万ドルもの金を手にした。

 彼はこの資金で世界中に2811にものぼる図書館を建設し、7689台のオルガンを教会に寄付した。さらに彼の名前を冠した文化施設や大学を作り、労働者や研究者のための基金を創設したり、天文台に世界最大の望遠鏡を寄付したりした。彼は思いつきでこれを始めたのではない。すでに若い頃の手帖に、「金持ちのまま死ぬのは恥ずべきことだ」と、この計画を記している。言ってみればこの夢の実現のために、彼は効率的にお金を儲けた。

 
 しかも彼はこの慈善事業を人任せにしないで、最大の「投資効果」をあげるために、晩年の20年間を精力的に捧げた。そして、彼が死んだとき彼の計画通り、金庫の中にはほとんど金が残っていなかったという。かれの場合、100パーセント、慈善事業に使ってしまった。

 そんな彼でも、「金を稼ぐことに比べたら、金を使うことは10倍もむつかしい」と言い残している。大切なことは、単に金を稼いだり貯めたりすることではなく、それを有効に活用し、人のため、世界のために如何に役立てるかということだろう。

 こうしたことは、何もお金だけの問題ではない。たとえば知識についても言える。ただ単にたくさんの知識を蓄えても、それを如何に活用するかを知らなければ、それは単に死んだ知識でしかない。本当の学力とは知識を蓄える能力ではなく、知識を活用する能力だろう。こうした発想の転換が今、日本に求められているのだと思う。



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