橋本裕の日記
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2001年04月13日(金) 福沢諭吉の金銭観

「福翁自伝」のなかに、こんなエピソードが描かれている。彼の兄に「お前はこれから先、何になるつもりか」と訊かれた諭吉は、「日本一の金持ちになって、思うさま金を使ってみようかと思います」と答えて、叱られたというのだ。

 そこで、諭吉が「兄さんはどうなさる」と訊くと、兄は「死に至るまで孝悌忠信」と一言だけ。諭吉は「ヘーイ」と言ったきり、そのままになったという。諭吉は「まず、兄はそんな人物で、また妙なところもある」と書いている。いかにも兄弟の性格の違いが出ていて面白い。

 諭吉は武士らしくもなく、お金を儲けることを軽蔑していない。そしてお金を儲けた後で、それを如何に使うかというところに目を付けているところがさすがだと思う。諭吉はお金の価値を理解していた。拝金主義者ではない。

「一国の独立は国民の独立心から湧いて出る。国中をあげて古風の奴隷根性ではとても国が持てない」 という諭吉の言葉は、奴隷根性を廃し、独立することの大切さを説いたものだ。

 金の奴隷になることを嫌って、金そのものを軽蔑しても、その魔力から自由にはなれない。お金に使われないためには、お金を使うだけの才覚を持つ必要がある。諭吉はこう考えて、西洋流の近代的な教育を導入した。そして、人作りこそ、お金の一番の有効な使い道であることを訴え続けた。


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