橋本裕の日記
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昨日、テニスコートで部活の指導をしていたら、女子のテニス部の顧問をしているA先生が携帯片手に走ってきて、「球の表面積を求める公式を教えて下さい」という。私が数学の教師だと見込んでの質問だろうが、実は私はこうした質問に咄嗟に答えるのが苦手である。
「ええっと、たしか・・・」と声には出さなかったものの、頭を遙か昔にならった算数の世界に彷徨わせた後、「それは同じ半径の円の面積の4倍です。つまり、4πrrですね」と、おもむろにグランドに指先で式を書いた。
「ほんとうですか。間違いないですか」とA先生は念を押す。「ええ、間違いありません」と言ってみたが、実のところあまり自信がない。なにしろ球の表面積などというものは、高校で教えたことはないし、おそらくは中学校時代にならったきりではないか。真剣な表情をしたA先生を見ているうちに、何だか不安になってきた。
「また、どうして、球の表面積など知りたいのですか」ときくと、「実は、今弟から携帯で訊いてきたのです」という。弟さんは小さな会社の社長さんで、球を包む材料の発注をしたいのだが、どのくらいの量を発注するべきか、その計算が出来なくて困っているのだという。
「それでは、公式が間違っていたら、大変ですね」と私が言うと、「そうです。いま経営が厳しいそうですから、たぶん倒産するかも知れません」というA先生の答え。冗談かと思ったが、A先生はしごく真面目な顔で言う。そして、弟さんに「円の面積の4倍だそうだよ。ええと、円の面積は・・・、そうそう、πは3.14だからね」
A先生が去った後、私の頭にひょっとして、円の面積の3倍ではないかという疑問が生じた。そこで私は部活の指導をそっちのけで、この公式を証明すべく、頭をフル回転させたが、残念なことにどうしても証明できない。もっとも、円の面積の3倍以上あることは証明が出来て、少しほっとした。
学校から帰り、さっそく、インターネット。「球の面積」というキーワードで検索すると、公式が出てきた。たしかに円の面積の4倍である。証明の仕方も書いてあったが、それは見ないことにした。いずれ暇が出来たら、自分で証明してみたいと思っている。
それにしても、こんな基本的な数学の公式が、身近な社会の現場で役にたっていることを知って、「数学もばかにできないぞ」と思った。そして、さっそく生徒にこの話をしてやろうと思った。
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