橋本裕の日記
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2001年05月09日(水) 経済優先から環境優先へ

 かっては「資源の枯渇」ということがよく言われたが、今あまりこの言葉を聞かない。これにかわって、「環境破壊」ということが言われるようになった。資源が枯渇する前に、環境破壊が限界値を越えるだろうという予想が一般的になったからである。

 たとえば、温暖化の原因になる二酸化炭素濃度は産業革命が始まる前の1750年頃には280ppmだったのが、現在は376ppmにまで上昇している。森林や海の吸収能力を越えて、現在排出される二酸化炭素の半分が大気中にたまりつづけているという。つまり、環境破壊を避けようと思ったら、排出量を現在の半分に押さえる必要がある。

 97年に京都で開かれた世界環境会議(COP3)では「京都議定書」が採択された。そこで、欧州が8パーセント、米国7パーセント、日本6パーセントと言った削減目標が掲げられたが、ブッシュ政権がこれを認めない方針を示したことで、その先行きが危ぶまれている。

 ブッシュ政権は今後20年間で1300ヵ所の発電所を建設するという方針を明らかにし、チェイニー副大統領は「毎週1基ずつ発電所を作らねばならない」と発表した。二人ともかって石油会社を経営した経験を持ち、石油業界の利権に直結した政権といわれている。したがって、「京都議定書」の批准を放棄したことも、政権と石油業界との癒着とらえられ、温暖化防止に積極的なヨーロッパ諸国の反発をかっている。

 ところで、地球上の全人口の4%を占めるアメリカ人が、人類の活動によって出される二酸化炭素の25%を排出している。一人あたりの二酸化炭素の年間排出量は5・5トンで、日本(2・5トン)の2倍以上である。これによっても、アメリカがいかに資源を多量に使っているかがわかる。

 アメリカの二酸化炭素排出量が多い原因の一つに、アメリカが「自動車社会」だということがある。一人あたりの年間排出量は、同じく自動車社会であるオーストラリアが4・7トン、カナダが4・4トンであるのに対し、公共交通が発達しているイギリス、ドイツ、韓国などは日本同様に2トン台、メキシコやインド、中国などの発展途上国に至っては1トン以下である。

 したがって、環境破壊を避ける一つの方法は、「車社会」から脱皮することだろう。広大な国土をもつアメリカでこれを実現することは難しいことだが、しかしこのことは避けて通れない道である。経済優先社会から環境優先社会へと、パラダイムを転換させる以外に、この危機を乗り越える手だてはない。


橋本裕 |MAILHomePage

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