橋本裕の日記
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2001年05月12日(土) 児童虐待の悲しい現実

 親や親にかわる養育者が子どもに対して行う身体的暴行、養育の拒否や放置、心理的虐待、性的暴行など、いわゆる「児童虐待」が増えている。厚生省の発表によると、その発生件数は毎年約3万件ほどだそうだ。虐待の内容は、身体的なものが51パーセントで、無視が37パーセント、そして心理的虐待10パーセント、性的虐待2パーセントだったという。

 虐待の被害を受けた人たちの手記をあつめた『日本一醜い親への手紙』という本がある。この本や続編の『もう家には帰らない』に寄せられた200人の手記はインターネットでも読むことが出来る。そこには被害者の赤裸々な心が綴られている。

「お父さん、お母さん、最近私は一冊の本を読みました。『日本一醜い親への手紙』という本です。生まれて初めて自分と同じ思いを抱えた人達の言葉にふれた、という感じです・・・」

「それからの母は目に見える場所に火を押し付けるという馬鹿な事だけはしなくなった。たとえ私が父とお風呂に入っても絶対バレない場所に焼印した。さて、それは何処でしょう? 答えはおしりの割れ目の陰部の近く。娘の陰部を開けて見る父親はいない。ここなら焼印の跡を父に発見される心配はない。幾重にも上から同じ所を焼かれた為40年近く経った今もケロイド状に残っている」

 私たちは毎日、様々なストレスの中で生活している。ストレスが引き金となって、病気になったり、精神的障害を経験するが、そうした苛立ちを子供にぶつけていると、それが度重なって、止めようと思っても止められなくなってしまい、幼児虐待に結びつく。こうした加害者の苦しい心中は、姉妹本の『子を愛せない親からの手紙』に寄せられた手記を読むとわかる。

「怒鳴って、殴ると、一瞬スッとする。でもその後、すっごく後悔する。 昨日も、娘が食べない、飲まないと、一杯殴ってしまった。娘は大泣きした。私も泣いた。後で、ごめんねと、殴った所を一杯撫でてあげた。 いい加減、こんな事、早くやめなきゃ。娘が物心ついてしまう前に…絶対。自分の家でさえくつろげない、と娘に嘆かれない様に。悲しい子供は、私の代でもうたくさん」

「私は世界で一番、最低の母。今、ぷくぷくのほっぺで長いまつげで、無防備で眠っているあなたを見ていると、自分の愚かさに吐きけすらしてこの世から消えてしまいたくなる。なぜ、いずれ自分の手から離れていくに決まっている我子を、ほんの一時、心から愛してやれないのだろう。いつも自問し、反省し、良き母になろうと決めるのだが長続きしない。自分の感情に流され激しく怒ってしまう。まるで心に悪魔がいるようだ」
 
 虐待は子どものこころとからだに深い傷あと(トラウマ)を残し、時には生命を奪うもある。さらに虐待されて育った子供は大人になったとき自分のこどもを虐待することになることが多い。この悪しき連鎖を断ち切ることが必要だ。虐待する親も、虐待される子供たちも、ともに被害者であるところに、この問題の余りにもかなしい現実がある。


橋本裕 |MAILHomePage

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