橋本裕の日記
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2001年05月20日(日) モンゴルに見る市場経済の影

 モンゴルで大統領選が行われている。モンゴルでは社会主義が崩壊した後、民主化がすすみ、96年の総選挙で共産党の人民革命党にかわり民主派勢力が政権を獲得した。そして家畜は私有化され、市場経済に移行した。

 しかし、これによって貧富の差が拡大し、多くの遊牧民が家畜を失い、経済不況が深刻化した。そして昨年の総選挙ではふたたび人民革命党が圧勝したという。今回の大統領選でも人民革命党の現職大統領が野党の民主党の候補を押さえていくらか優位に戦いを進めているようだ。

 モンゴルではこうした経済的混乱に加え、2年続きの大寒波で400万頭以上の家畜が死んだという。ウランバートル郊外の草原には家畜を失った遊牧民のみすぼらしい移動式住居ゲルがいくつも立ち並んでいる。都市にも職はなく、失業があふれているらしい。人口の36パーセントが月収7ドルに満たない貧困層で、昨年の一人あたりの国民総生産は350ドル。「民主でも共産でもいいから職が欲しい」というのが人々の切実な願いだという。

 転換期の混乱と言えばそれまでだが、左右に揺れる政治の混乱も貧困化に拍車をかけているのだろう。急速な市場経済化により、経済優先、お金儲け優先の拝金主義がはびこり、モンゴル旧来の生活様式や共同体が崩壊しつつあるように思われる。あと数十年もすれば、経済的に立ち直るかも知れないが、そのとき、モンゴルはもう以前のようなノスタルジーを掻き立てる「精神的にゆたかなモンゴル」ではなくなっているかも知れない。


橋本裕 |MAILHomePage

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