橋本裕の日記
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2001年05月24日(木) |
ハンセン病に首相決断 |
国が全面的に敗訴したハンセン病国賠訴訟の熊本地裁判決について、政府が23日にこれまでの姿勢を覆し、一転して「控訴を断念」した。官僚の書き上げた「控訴」のシナリオを、首相が直前になって覆す決断をしたという。
「今回の判決を重く受け止めまして、きわめて異例な判断ですが、政府声明を出して、控訴を行わないことを決定いたしました」
6時過ぎに官邸で行われた記者会見での小泉首相の発言である。まもなくテレビで「控訴断念」の速報が流され、首相との面会を終えて弁護士会館にいた約40人の原告たちは、弁護士や支援者たちと抱き合って喜んだという。
国民に人気の高い首相である。党内に確固とした足場を持たない首相が唯一たよりにできるのは、国民の声であろう。もし官僚のシナリオにのって「控訴」していたら、人気に翳りが出る。そうすると、「聖域なき構造改革」もかけ声だけに終わる可能性がある。
ハンセン病の判決をどう受け止めるか。首相にとって正念場だった。首相が本当に「構造改革」をする気があるのかどうか、その「踏み絵」でもあったのである。人気ばかり先行した小泉政権だが、ここにきて一つの確実な「実績」をあげることができた。
官のシナリオを覆した首相の決断は見事である。しかし、首相はこれを「きわめて異例な判断」と言っている。自民党幹事長の山崎氏は「超法規的」という言葉を使っている。裁判所の判決に従うことが「超法規的」というのがうなずけない。25日に正式に閣議決定して、政府声明を出すと言うが、このあたりの表現に注目したいと思う。
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