橋本裕の日記
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2001年05月25日(金) 官僚に支配される閣議

 憲法には、「総理大臣と他の国務大臣で構成される内閣が行政権を有する」と規定されている。ところが、これまで行政権はほとんど内閣に属したことがなかった。それでは、だれが行政権を行使していたかといえば、それは官僚たちである。

 閣議の前日に「事務次官会議」がもたれ、閣議に出される法律案や予算案はすべて、ここにかけられ、そしてすべての省庁の事務次官が賛成した案件だけが翌日の閣議にかけられる。つまり、一つの省庁でも反対すれば法案は没になるわけで、省益優先がまかりとおるシステムになっている。

 定例閣議は、毎週火曜日と金曜日に行われるが、事前に「事務次官会議」で決着が付いているので、閣議は形式的なものでしかない。閣議の議決もまた、全員一致によることとされているが、これは、「内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2項)ことに基づくものだそうである。

 行政改革の出発点は、まずこうした閣議の在り方を、根底から変えることだろう。今度の「ハンセン病控訴断念」の決定は、首相がイニシャティブを発揮して、官僚の決定を覆したものとして、これまでにない新しさを感じさせる。しかし、今後もこうした小泉流が通用するとは限らない。それは彼自身が今回の決定を「異例な決断」と呼んでいることでも分かる。

 首相は国民の信託を受けた行政府の長であるべきで、閣議を形式的に主宰する名誉議長のようなものであってはならない。しかし、現実にはこれまで首相の主宰する内閣に、その実権はなかった。行政権を官僚の手から取り戻し、日本を長年支配してきた「政治不在」を解消するためにも、国民の直接選挙で首相を選ぶ「首相公選」を実現したいものだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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