橋本裕の日記
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2001年06月07日(木) 愛とはともに生きること

「第三の男」の監督キャロル・リードの作品に軽快なコメディタッチの「フォロー・ミー」という映画がある。結婚後ひんぱんに家を空ける妻ベリンダ(ミア・ファロー)に不信感を抱いた夫チャールズ(マイケル・ジェイストン)は私立探偵クリストホルー(トポル)を雇って、妻を尾行させる。

 チャールズは勤勉実直な優秀な会計士で、教養豊かで育ちも良く、非のうちどころのないイギリス紳士。しかし、若いベリンダはそんな夫との息が詰まるような生活に耐えきれない。お互いに、自分には無いものを持っている相手にひかれて恋に落ち結婚したものの、二人にとって現実の結婚生活は厳しい。

 やがて、ベリンダはひとりでロンドンの街をそぞろ歩きながら、いつも自分の傍らにいて、自分を見守っている男の存在に気付く。そして次第に二人で歩くことが楽しくなっていく。植物園や映画館、味わいのあるユニークな街角や賑やかなパブなど、二人は言葉を交わさず目と目だけで語り合い、ロンドン中をそぞろ歩きまわる。そして、この無言劇のデーがやがて二人の中に細やかな愛情を育んでいく。

 二人の関係は夫の知りところとなる。激高する夫、家を出る妻。ここから二人の男の奇妙な友情が生まれる。そして、トポル扮する探偵クリストフォールは、彼女の夫チャールズに、「私がしたことと同じように10日間、仕事を投げ出して、ただひたすら彼女の後を追ってみろ。ただ近くにいるだけで、一言もことばをかわさないで」とすすめる。

 探偵クリストホルーはさらに「世の中の男女には、いい相手が見つからないと嘆く人が多いが、彼らは知らないんだ。互いの心の声にじっと耳をすまし、ただ見つめ合えば結婚できるってことを」といも言う。愛とは何か。それは「ともにいて幸せだと感じること」かもしれない。


橋本裕 |MAILHomePage

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