橋本裕の日記
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2007年11月05日(月) 算数できぬが思索はたのし

 私の先日、喫茶店で360円のコーヒーを妻と二人で飲んで、私がお金を払った。千円札と20円を出して、300円のおつりをもらった。これがどうも腑に落ちないので、妻に「釣りは300円であっているのか」と念を押した。

妻は心配顔になって、「あなたやっぱり病院に行ったほうがよいわよ」という。「私がついて行ってあげるから、是非行きましょう」と今にも連れて行きそうなので、「まあ、そう、あわてるな。学校で授業ができなくなったら行くよ」と、とにかくその場を切り抜けた。

妻に言わせると、最近の私はどうも普通ではないのだという。私はもともと天然ボケの嫌いがあったが、最近、この傾向が著しくなってきたようだ。たとえば地下鉄の名古屋駅で降りるべきところを、その手前の栄駅で降りたことがあった。地下の改札口を出て、JR駅に続く階段を探したが見当たらない。

ふつうなら、改札口をでる前に気づくべきである。ところが出た後も、このことに気づかず、あちこち探しまわって、どこにも階段が見当たらないので、頭の中が真っ白になってしまった。これは4ケ月ほど前に起こったことだが、このときは我ながら情けなかった。

数週間ほど前には、馴染みにしている近所の図書館にたどりつけなかったことがある。しかもその前を通りながら気づかない。通り過ぎても気づかない。そして結局自分がどこにいるのかわからなくなって、これもパニック状態になった。

そして先週の金曜日には、時間を間違えて、1時間も早く学校を早退してしまった。JR木曽川駅に降り立ったが、妻の迎えの車が見当たらない。しばらく待ったあと、家に電話をかけた。ところが電話の声が見知らない女性に聞こえた。

おもわず、「どちらさまですか」と訊いてしまった。「そちらこそ、どちらさまですか」と訊かれて、「橋本です。そちらは橋本さんではないのですか」と訊いた。「何いっているのよ。大丈夫?」と返されて、はじめて電話の声が妻だと気づいた。しかも、そのあとがいけない。

「今、君はどこにいるの」
「どこって、家に決まっているじゃないの。あなたこそ、どこにいるの」
「木曽川駅だよ。どうして迎えに来てくれないの」
「あなた、今何時だと思っていの」

妻に言われて、いつもより早い時間だと気づいた。そういえば、職員室を出るとき、教頭をはじめまわりの人たちが怪訝な顔をしていた。きっと「こんなに早く帰るなんて、職務怠慢だ」と思ったことだろう。そこであわてて学校に電話し、教頭に事情を話し、無断早退を詫びた。

こんなことがあるので、妻が「あなた、アルツハイマーかも知れないわよ。最近、どうもおかしいわよ。病院に行ったほうがいいわよ」としきりに言う。たしかに、道に迷ったり、物忘れが激しい。しかし、自分ではアルツハイマーだとは思っていない。

瞬発的な思考力はすっかり衰えたが、哲学の本も数学の本もまだまだ読める。持続的な思考力は何とか健在だ。まあ、この日記が書けなくなったら、そのときは妻に連れられておとなしく病院へ行こうかと思っている。

(今日の一首)

 ときとして道に迷い物忘れ
 算数できぬが思索はたのし


橋本裕 |MAILHomePage

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