橋本裕の日記
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2007年11月13日(火) 原子論は凄い

 朝永振一郎さんと一緒に量子力学の「繰り込み理論」でノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンは、物理学の優れた啓蒙家であり教育者でもある。その彼が、「科学の歴史を一文に集約すれば、すべてのものが原子でできているということに尽きる」(ファインマン物理学)と述べている。

「すべてのものが原子からできている」という「原子論」の考え方は、古代ギリシャからあった。デモクリトスが「原子論」の始祖だといわれている。しかし、古代の原子説(アトム説)は空想の産物でしかなかった。またこの原子説から実りのある新しい学説が生まれることもなかった。

近代の原子論は古代の原子説とは違って、ずいぶん多産である。世の中のあらゆる現象を、ことごとく説明できるほどそれは強力な武器になった。科学者は「原子論」という武器を手にすることで、たくさんの獲物を獲得することができた。原子論は近代科学の基礎であるばかりではない。それは科学を育てる豊穣な土壌でもあった。

今では小学生でも「物質は原子からできている」ことを口にする。しかし、残念なことに、ただそれを知識の一つとして知っているだけで、その思想の恐るべき豊穣さについては十分教えられていない。それはその凄さを教えない教師の責任でもある。

さいわい私は中学生のときにとてもよい教師にめぐり合った。私の家にたまたま下宿することになった物理学科の学生の井上さんである。彼は原子論がわかれば、森羅万象がことごとく説明できるのだという。彼のこの言葉を聞いて、私はすっかり「原子論」のとりこになった。

(今日の一首)

 さだかには目に見えねども風吹けば
 これも分子の体当たりかな


橋本裕 |MAILHomePage

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