橋本裕の日記
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小学校の4年生のとき、顕微鏡を買ってもらった。これで身の回りのいろいろなものを観察した。アメーバーやゾウリムシもこのとき初めて見た。見ていると時間が経つのを忘れた。顕微鏡で見るミクロの世界は、ほんとうにすばらしかった。
中学生になってから、さらに性能の良い顕微鏡を買ってもらって、これで釣りがね虫など、いろいろなプランクトンを観察し、色エンピツで写生した。これを冊子にまとめて夏休みの課題として提出すると、理科の先生が授業のときにみんなの前で紹介してくれた。とてもうれしかった。
接眼レンズと対物レンズを組み合わせると、物が大きく拡大してみえる。人の目ではせいぜい0.2mmくらいまでしか識別できないが、この光学顕微鏡を使うと、その数百分の1(数ミクロン)まで見える。しかしこれで原子や分子まで見えるかと言うと、そうはいかない。それは原子や分子の大きさがそのまた千分の1(ナノ)ほどしかなくて、可視光線の波長よりはるかに小さいからだ。
物を見るというのは、光の波を物に当てて、その反射を見ているわけだ。たとえば池の岸で波を起こすと、その波は池に浮かぶ岩に当たり反射してくる。この反射してきた波によって、私たちは岩の存在を知ることができる。また対岸にいる人も、岩の後ろに波の影ができることによって、岩の存在を知る。
ところが岩が波の波長より小さいと、波は岩の後ろに回りこみ、波は岩を飲み込んでしまう。そうすると波は反射しないし、岩の後ろに影も作らない。岸辺に到着した波を観測しても、岩の存在を知ることはできない。
これと同じ理屈で、波長が原子の半径の数千倍もある可視光線では、とうてい原子や分子は見えない。バクテリアやウイルスでさえ見るのが難しい。しかし、もしさらに波長の短い紫外線やx線を使えば、より細かなものを見ることができる。もっとも波長の短い電波はエネルギーも大きいので、これを当てると、小さなものは破壊されるかも知れない。私たちもうっかり被爆しないように注意しなければならない。
しかし、原子や分子を見ようと思うと、x線でもその波長に限界がある。そこに登場したのが電子線を使った顕微鏡である。電子は原子よりも小さく、その波長も短い。だから、これを当てればさらに細かい世界の様子がわかる。実際に現在では原子や分子の写真も撮られている。原子や分子の姿を見ることができる時代になったわけだ。
http://blogs.yahoo.co.jp/star_warker/35653219.html
電子顕微鏡についてはひとつ思い出がある。今から30年ばかり前に、教員になったばかりの私が大学の研究室に遊びに行くと、「橋本君、電子顕微鏡をやろうか」という。研究室で最新式のものを買うことにしたので、現在使っている装置は廃棄することになったのだという。
見せてもらうと、部屋をまるごと占拠している。これを高校まで運ぶのも容易ではないし、どこに置くかも問題だ。それに電力もかなりかかりそうだ。しかし、電子顕微鏡がただでもらえるのは滅多にない機会だ。高校に帰り、さっそく事務や教頭に相談したが、色よい返事はもらえなかった。電子顕微鏡でミクロやナノの世界を探検するという夢は、こうして費え去った。
(今日の一首)
原子まで写真でみえるこの不思議 ウイルスたちも素顔を見せる
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