橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2007年11月18日(日) 音を伝える分子たち

 水面に木片を浮かべ、これを上下に震動させると、そこから同心円状に波紋が広がる。これは木片によってかく乱された水面の振動が次々と周囲に伝播して行った結果だ。

このときできる山と山の間の距離を波長という。波が1秒間に伝わる距離を波長で割ったものが振動数である。これは木片によって水面が1秒間に上下する回数に等しい。また、上下に震動する幅の半分を振幅という。

 水面の波は目に見えるので分かりやすいが、私たちが耳にする「音」も空気中を「波」として伝わって来る。たとえば、太鼓を叩くと、皮が振動し、その近傍の空気を振動させる。この空気の振動(密度の変化)が次々と周囲に伝播したものが空気中の音波である。

この空気の振動はやがて私たちの耳に到達し、鼓膜を振動させる。私たちの神経はこの鼓膜の振動を電気信号に変えて脳に送る。そして脳のなかで電気信号が意識に変換されて、私たちはそれを「太鼓の音」として認識するわけだ。

水面の上下でできる波は、水面が進行方向に垂直に振動しているので横波という。これに対して、空気中を伝わる音波は進行方向に平行に空気が振動している。そこでこれを縦波と呼んでいる。このように波には横波と縦波の二つがある。

 音波は空気の振動が粗密波として伝わる現象だが、これを「原子論」の立場から眺めるとどうなるか考えてみよう。まず太鼓の振動によって、その近くの気体分子が弾かれる。しかしこの分子がそのまま飛んできて、私たちの鼓膜を振動させるわけではない。

 じつのところ、気体分子は常温常圧の状態で、1秒間に10億回も隣の分子と衝突している。平均して0.00001mmも走れば隣の分子に衝突する。衝突された分子もすぐにその隣の分子を弾き返し、この衝突が次々と伝播して、ついには私たちの耳に飛び込んでくる。

音がつたわるのは、気体分子がこのように激しく衝突を繰り返しているからだ。気体分子が希薄になると、衝突の回数が減って、音が聞こえにくくなる。真空中では気体分子が存在しないので、もちろん音は伝わらない。反対に水中では物音がよく聞こえる。これは水分子の密度が大きいためだ。伝播速度も大きいので音源が近くに感じられる。

(今日の一首)

 愛犬と歩いた道の柿の木が
 色づきにけり今日も青空


橋本裕 |MAILHomePage

My追加