橋本裕の日記
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OECDの行った学力調査で、日本の小学生や中学生の理科の成績はいつも上位に入っている。ところが、18歳から69歳の約2000人を対象にした面接調査では、その成績があまりかんばしくはない。たとえば「電子と原子とどちらが大きいか」という設問に対する正答率はわずか3割だ。他の設問についての正答率も書いておこう。
○ごく初期の人類は恐竜と同時代に生きていた。(×40) ○電子の大きさは原子の大きさよりも小さい。(○30) ○レーザーは音波を集中することで得られる。(×28) ○男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子だ。(○25) ○抗生物質はバクテリア同様ウイルスも殺す。(×23)
エンピツをころがしても半分は正答が出る○×式の二択問題で、この成績はちょっとなさけない。ちなみに日本の大人の科学理解力はOECD加盟国のなかで最下位に近い51位だという。日本の大人たちも中学生のときに、原子の構造について習っている。そして質問されれば、「原子は原子核とそのまわりにある電子によってできている」と正しく答えたはずだ。
ところが大人になると、これらの科学知識はすっかり蒸発してしまう。原子から分子や化合物ができるしくみについて尋ねられても、多くの大人たちは何も答えられないのではないだろうか。
原子は原子核のなかの陽子の数と、そのまわりにある電子の数が等しい。これで電気的に中性になっている。しかし原子の中にはさらに電子を獲得して陰イオンななりたがる塩素のような元素がある。また、一方では、電子を放出して陽イオンになりたがるナトリウムのような元素もある。
魚心あれば水心で、この両者が出会うと、ナトリウムから塩素に電子が移動し、それによってそれぞれの原子はプラスとマイナスの電荷を帯び、お互いに引き合って結合する。これがイオン結合である。
また、酸素と水素のように、両者とも電子を求める場合は、その両者で電子を共有して結合することでお互いの欲望を満たす。酸素は2個の電子をほしがり、水素はそれぞれ1個の電子がほしい。そこで、1個の酸素原子が2個の水素原子と結合する。これが水分子である。分子はこうしてつくられる。これを共有結合という。
このほか、鉄や銅のような金属原子はそれぞれが一部の電子を供出して、これを全体で共有することで結合する。これを金属結合という。全体で共有された電子は自由に金属の中を動き回ることができる。そこでこれらを自由電子という。
金属の中には、自由電子が大量に存在する。金属といえば、電気の良導体であることが大きな特徴だが、これは自由電子が存在するためである。電圧をかければ、この電子たちがいっせいに移動を開始する。この電子の流れが電流である。
金属はいずれも熱伝導率が大きい。これも前に書いたように自由電子が効率的に移動することで熱を運ぶためである。これでなぜ電気伝導度の大きな物質ほど熱伝導率が高いのかも説明がつく。このように、金属に特有な性質にはいずれも自由電子が関与している。
たとえば、金属はいずれも特有な光沢を持っている。この金属が特有の光沢を持っているのは、光を反射するからである。それではなぜ金属は光を反射するか。これも自由電子で説明できる。明日の日記に答えを書いてみよう。
(今日の一首)
一日で真白になりし雪山に 光あふれるさわやかな朝
散歩道から御岳が大きく見える。雪の御岳を正面に見ながら、木曽川の堤の上で腕振り体操をする。御嶽山のほうに腕を振り上げ、その神々しい霊気をありがたくいただいている。
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