橋本裕の日記
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気温が上昇すると、水の体積がわずかに増え、これが海面を上昇させる。これが主な原因になって、これからの100年間で地球の平均気温が4度上昇したとき、海面が40センチほど上昇するのだという。
水に限らず、ほとんどの物体は温度が上昇すると膨張する。気体の場合だと、圧力が一定の場合、体積Vは絶対温度Tに比例する。比例定数をkとすると、次のように書ける。
V=kT
これは1787年にシャルルによって発見された。ここでT(K)は絶対温度である。これは摂氏温度t(℃)を使って、次のように書ける。
T=t+273.15、(t=T−273.15)
絶対0度は約−273℃である。そして、シャルルの法則を見て、気付くことがある。絶対零度で気体の体積が0になってしまうことだ。もちろん気体分子それ自身の大きさはあるわけだから、気体の体積が完全に0になることはない。しかし、この式はある重大なことを示唆している。
それは絶対零度よりも低い温度は存在しないということだ。高温はいくらでも存在できるのに、低温のほうに限界がある。これはどうしたことであろうか。実はこれが大きな謎だった。
この謎は、温度が分子や原子の運動エネルギーだとわかれば理解できる。つまり絶対0度では分子や原子は完全に静止し、運動エネルギーも0になってしまう。つまり絶対0度というのは、あらゆる運動が死滅した死の世界なわけだ。
もっとも、これは古典力学が描くミクロの世界で、実際の世界は量子力学の「不確定性原理」によって記述される。そこでは絶対0度でも原子や分子は位置が決まらずに、量子的なゆらぎで「0点振動」をしていると考えられる。
そして原子や分子のもつ「波動」という量子論的な特質があらわになる。極低温で実現する超流動とか超伝導とか呼ばれる独特な興味深い量子現象がこれである。しかし残念ながら、これについて今ここでくわしく説明する余裕はない。
いずれにせよ、温度が高くなると、分子や原子の運動がさかんになり、これによって気体の場合はあらたな圧力が生まれ、これが外界の圧力と拮抗するところまで膨張する。シャルルの法則はこうして説明できる。気体ばかりではなく、液体や固体もほぼ同じ理屈で熱膨張すると考えてよい。
(今日の一首)
すれちがう人の言葉もなつかしく 国のまほろば大和しうるわし
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