橋本裕の日記
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ボルツマンによると、温度(気温)は空気中の気体分子の運動エネルギーの平均値になっている。つまり分子速度vの二乗に比例するわけだ。そして熱というのは、この力学的エネルギーの総量である。
しかし、この説明は問題点をふくんでいる。たとえば温度計を野外に持ち出し、黒い紙で覆ってみよう。そうするとたちまち温度計の目盛りは上がる。私たちも白い服より黒い服を着ているほうがあたたかく感じられる。これは黒の方が熱を多く吸収するからである。そしてその温度は気温よりも高くなる。
屋根の上に取り付けられた太陽温水器から供給される温水はたとえ最高気温が10度しかない真冬でも十分にあたたかい。さて、その熱は何処からやってくるのだろうか。それは気体の分子運動からではない。太陽から、日光というかたちでやってくる。
月の沙漠をはるばると 旅のらくだが行きました 金と銀との鞍おいて 二つ並んで行きました
ごぞんじ「月の沙漠」の歌いだしだ。これについて、らくだの背中に金や銀の鞍をおいたら、たちまちそれは高温になって、とても人は乗ることはできないし、らくだも丸焼けになるだろうと心配する人がいる。たしかにこの心配はもっともだ。金や銀の鞍は歌の世界だからロマンチックなわけで、実際には実用にはならない。
日光にあたると金属はとてつもなく高温になる。それは金属は自由電子を多く含み、これが太陽光線のエネルギーを効率よく受け取るからだ。金属に限らず物体は真空中でも光を当てることで熱することができる。実際にアメリカでロケットを使って行われた温度観測結果を紹介しよう。
地上0メートル・・・・27℃ 地上10km・・・・・−58℃ 地上50km・・・・・0℃ 地上90km・・・・・−83℃ 地上400km・・・・727℃
温度は高度が上がるに連れて波を描いて下降するが、地上90kmで最低温度1−83℃を記録した後上昇に転じ、地上400kmでは727℃の高温になっている。そしてその後は、この高温が一定にたもたれる。この実験では727℃だが、使用する温度計によっては、もっと高温になることが予想される。
宇宙空間には空気は存在しない。しかし、太陽からとどく輻射エネルギーで、物体はおどろくほど高温に状態におかれる。常識離れしていて想像しにくいが、宇宙空間はかなり過酷な炎熱地獄になりうるのである。
(参考文献) 「なっとくする熱力学」 都筑卓司 講談社
(今日の一首) サイエンス学べば解ける謎多し されども残るこころのふしぎ
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