橋本裕の日記
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2007年12月01日(土) |
トラックの運動エネルギー |
車はとても便利な人間の発明品だが、ときには「走る凶器」にもなる。とくに恐ろしいのはダンプカーで、私は後ろに大型トラックが迫ってくると、背筋が寒くなり思わず車線変更してしまう。
運動している物体が大きな力をもっていることは昔から知られていた。もう少し正確にいうと、力を及ぼして物を動かす能力、つまり「仕事をする能力」をもっている。そしてこの「仕事をする能力」を、私たちはエネルギーと呼ぶ。
ここで大切なのは、ただ力を及ぼしているだけでは仕事をしているとはいえないことだ。バケツに水を入れてぶら下げていても仕事をしていることにはならない。コンクリートの壁を何時間馬鹿力で押し続けてくたびれ果てても、実際に壁が動かなければ仕事量は0である。
仕事(ジュール)=力(ニュートン)×動かした距離(メートル)
なお、力の単位はニュートン、仕事量の単位はジュールで表す。0.1kg(100グラム)の物体にかかる重力はおよそ1(0.1kg×9.8m/ss)ニュートンである。これを1メートル持ち上げれば、その仕事量は1ニュートン×1メートルで1ジュールになる。
それでは、質量3000kg(3トン)のトラックが20m/s(時速72キロ)で運動しているとする。このとき、このトラックのもっている運動エネルギーはどのくらいになるのだろう。
それはこのトラックが静止するまでにどれだけの仕事をするかで計られる。ニュートンの作用反作用の法則によれば、このトラックの他者に及ぼす力は他者から受ける力に等しい。
そこでいま簡単のために、このトラックが一定の力F(ニュートン)をt(秒)間受けて、x(メートル)だけ動いて静止したとしよう。この場合、トラックは等加速速度運動をする。そこでこの加速度をaで表す。そうすると、次のような式が成り立つ。
F=ma (ニュートンの運動方程式) ……(1) v=at 、t=v/a ……(2) x=1/2×a×(tの2乗) ……(3)
(2)、(3)より、
x=1/2×a×v/a×v/a ……(4)
そうすると、(1)、(4)より、仕事W(ジュール)は次のようになる。
W=F×x=ma×1/2×a×v/a×v/a=1/2×m×v×v
一般に、質量m(キログラム)の物体が速度V(メートル/秒)で動いているとき、この物体がもっている運動エネルギーは次のようになる。
E=1/2×m×v×v(ジュール)
したがって、質量3000kgのトラックが10m/s(時速36キロ)で運動しているとすると、その運動エネルギーは次のようになる。
E=1/2×3000×10×10=150000(ジュール)
実験によると、1カロリー=4.2ジュールだから、これは熱量に換算すると、ほぼ36キロカロリーということになる。つまりこのトラックがブレーキをかけて静止すると、そこで発生する摩擦熱は、1kgの水の温度を36度ほど上昇させるわけだ。
質量が小さな分子や原子の運動エネルギーはひとつひとつはわずかな量だ。しかし、これも数が集ると馬鹿にはならない。1立方メートルの空気の質量は1.2kgである。これが高速で動くととほうもない運動エネルギーをもつ。台風やハリケーンが恐ろしいわけだ。
(今日の一首)
夢の中我を呼ぶ声亡き父に はいと答えて夢よりさめる
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