橋本裕の日記
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2007年12月02日(日) 身投げの運動学

 先月6日、東京の池袋の8階建てのデパートの屋上から25歳の無職の女性が身投げをした。そしてその下を歩いていた38歳の会社員の男性が、下敷きになって死亡した。まさか上から人が降ってくるとは思ってもいなかっただろう。災難と言うしかない。

 8階建てというと30メートルほどはあろうか。そうするとこの女性が身投げをして地上に落ちるまでの時間はどのくらいになるのだろうか。ガリレオが発見した落下の法則によると、静止していた物体がt秒間に落下する距離をyメートルとすると、次のような式が成り立っている。

y=1/2×9.8×t×t≒5×t×t

 これによると、1秒後の落下距離はおよそ5メートル、2秒後には20メートル、3秒後には45メートルほど落ちる。実際は空気の抵抗があり、距離は縮まる。そうしたことも勘案すれば、おおよその目安として、30メートル落下するのに要する時間は、2.5秒くらいだろうか。

 8階建てのビルの屋上から飛び降りると、2.5秒以後には地面に衝突する。その落下寸前の速さと、そのときの運動エネルギーKもついでに求めておこう。計算の都合上、女性の体重を40kgとした。

 v=9.8×t≒10×2.5=25(m/s)=90(km/時)

 K=1/2×m×v×v=0.5×40×25×22=12500(ジュール)

昨日の日記で、3トントラックに衝突したとき、150000ジュールものエネルギーが解放されることがわかった、これとくらべるとたしかに1桁以上小さいが、それでもたとえ相手がかよわい女性であっても、時速90kmで衝突されたら、とんでもないことになる。

身投げした女性にも辛い事情があったことだろう。落下するまでの2.5秒の間に、どんなことを考えたのだろう。身投げした女性にも、巻き添えになった男性にも、同情を禁じえない。お二人のご冥福をお祈りします。

(今日の一首)

 身投げする人の心は知らねども
人降る街はさびしきものぞ


橋本裕 |MAILHomePage

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