橋本裕の日記
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2007年12月03日(月) 力学的エネルギーの話

 運動している物体は、他の物体に力を及ぼし、これの位地や運動状態を変化させることができる。つまり仕事をする能力を持っている。そしてこの「仕事をする能力」をエネルギーと呼ぶ。

 30メートルの高さの屋上から飛び降りた人は、地面近くでは時速90キロメートルもの速度をもち、これに相当するエネルギーを持っている。この運動することによってもつエネルギーを運動エネルギーとよぶ。

ところで、この運動エネルギーはどのようにして得られるのだろうか。それは、物体が落下することで得られる。このとき、重力が仕事をする。そして落下するにつれて物体の速度が速まり、運動エネルギーが増大する。

そうすると、高い位置におかれた物体も、間接的に「仕事をする能力」を持っていることになる。この間接的(潜在的)に持っているエネルギーを位置エネルギー、もうすこし一般的には、ポテンシャル・エネルギーという。

 そこで地上からxメートル高い位置にある質量mの物体の位置エネルギーUを計算してみよう。それはこの物体が地上に落ちる瞬間の運動エネルギーに等しいはずだ。そしてそれは地球の重力mgがこの物体に対してした仕事量mghに等しいはずだ。そこでこれを計算でたしかめてみよう。

 U=1/2×m×v×v  ……(1)

 ここで重力加速度をg、落下時間をtとすると、次の式が成り立つ。

 v=g×t より、

 v×v=g×g×t×t ……(2)

 x=1/2×g×t×t より、

t×t=2×x/g ……(3)

 よって、(1)、(2)、(3)より、

 U=1/2×m×v×v
=1/2×m×(g×g×t×t)
  =1/2×m×g×g(2×x/g)
  =mgx

 つまり、U=mgx、

位置エネルギー=重力加速度×高さ ……(4)

という関係式が得られる。ここで重力加速度はg=9.8(m/s)である。ここでmgは重力の大きさに等しいから、こうして「物体の位置エネルギーはその物体が地上に落下するまでに重力がする仕事量に等しい」ということがたしかめられた。

つまり、重力がした仕事量mgが、そっくり物体の運動エネルギー1/2×m×v×vに姿を変えている。エネルギーは仕事をする能力だといったが、反対に、仕事をされると物体はその分だけエネルギーが増える。仕事はエネルギーを作り出し、たくわえられたエネルギーはやがて仕事を生み出す。

 投身自殺した女性は、ビルの屋上に上がるときに自分の足の筋肉を使って仕事をしている。重力mgにさからって、30メートル階段を上がったとしたら、30×40×9.8(ジュール)である。エレベーターを使ったとしても、同じだけエレベーターは仕事をしている。

女性のした仕事、もしくはエレベーターがした仕事量だけ、彼女の位置エネルギーが増大し、やがて彼女が身を投げると重力が仕事をしはじめて、女性が持っていた位置エネルギーは運動エネルギーに変換されはじめる。

 このように、仕事を媒介にして、エネルギーは位置エネルギーから運動エネルギーへ、あるいは、運動エネルギーから位置エネルギーへの姿を変える。そして物体の落下運動で見てみると、この両者を合わせたもの(力学的エネルギー)の総量はかわらない。

 mgx+1/2×m×v×v=(一定)

 これを力学的エネルギー保存の法則という。この法則はいつも成り立つとはかぎらない。なぜなら、自然界には力学低エネルギーの他に様々なエネルギーが存在するからだ。

たとえば摩擦によって発生する熱もエネルギーの一種である。その他に分子や原子が結合するときに得られる化学エネルギーがあるし、原子力エネルギーもある。電磁波や音波もエネルギーを持っている。

実際のところ、これらのすべてのエネルギーを考えなければ、エネルギー保存則が成り立つとはいえないが、実験室で行われる振り子の実験などではおおむね力学的エネルギー保存則が成り立っている。その様子を観察できるおもしろい仕掛けがあるので、明日か明後日の日記で紹介しよう。

(今日の一首)

木曽川の紅葉美し御岳も
伊吹も見えて歩めばたのし


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