橋本裕の日記
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ブランコは格好の物理の教材である。これをうまく利用すれば、生徒に科学の面白さを実感してもらえるのではないか。そう考えて、理科の教師をしていた頃は、よくブランコの実験をしたものだった。
仕掛けは簡単で、振り子の先にバネをとりつけ、そこに錘をつるして、上下に振動させる。はじはなにも起こらない。ところが振り子の糸をたくり寄せてすこしずつ短くしていくと、ある長さのところで、錘が横に振れだす。つまり振り子現象が始まる。
これはバネによる垂直方向の運動が振り子運動を呼び起こしたわけで、まさにブランコの運動と同じである。こういうことが起こるためには、振り子の周期とバネの周期が同じにならなければならない。そうすると、人が膝を屈伸させるのと同じ仕事をバネの振動が果たすことになり、振り子が振れ始めるわけだ。
ただブランコとちがうのは、つねに繰り返される屈伸運動とちがって、振り子の振幅が大きくなるにつれて、バネによる上下の振動が小さくなることだ。そして上下振動がなくなったところで、振幅が最大になる。これはバネの運動エネルギーが使い果たされたためである。これがそっくり振り子の運動エネルギーになったわけだ。
さらに面白いのは、ここからである。こんどは振り子の揺れ幅がだんだんと小さくなって、その分バネの振動が復活してくる。そして振り子の運動がなくなったところで、もとのようにバネが大きく振動する。こうして再び出発点に戻って同じようなことが繰り返される。
これを見せれば、生徒はだれでも不思議がる。錘をブランコの板の形にして、バネに衣を着せて人形のようにすれば、よけいに面白い。面白いだけではなく、「どうして?」という疑問と好奇心がかきたてられる。
ここで大切なのはエネルギーの考え方である。これがお互いに別のものに乗り移り、姿を変えながら、しかも全体で保存されている。バネ振り子の運動はこの自然の摂理をとても生き生きと実感させてくれる。バネさえあれば誰でもできる実験なので、家庭でこれをやってみて、親子で物理の面白さを体験してみてはどうだろう。
(今日の一首)
バネふり子振らしてみれば面白い 生き生き感じる自然の不思議
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