橋本裕の日記
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2007年12月07日(金) モノが持つ固有の音

 物体を打つと音が出る。その物体に固有の音がでるので、その音を聞けば、それが何かおおよそわかる。ガラスは甲高い音を出すし、木片はにぶい低い音を出す。あたりまえのことのようだが、これを科学的に説明してみよう。

 音が出るのは、物体が振動するからだ。その振動の様子がその物体の材質や形によって決まってくる。たとえば弦を爪弾くと、そこから出てくる音の振動数はその弦の長さで決まってくる。

それは弦を伝わる波の形が、その寸法できまってくるからだ。たとえば、長さ20センチメートルの弦を振動させると、波長が40センチメートの定常波ができる。これは両方の端が固定さているので、そこで波の振幅が0にならざるを得ないからだ。つまり両端が波の節になり、中央部で振幅が最大の腹になる。

しかし、この弦の中にできる定常波はこれだけではない。両端が節になればよいのだから、波長が20センチの波や、10センチの波も可能だ。一般的にLを弦の長さ、λを定常波の波長とすると、nをの正の整数として、次の式が成り立つ。

λ=2L、L、2L/3、L/2,2L/5、…
 =2L、2L/2、2L/3、2L/4、2L/5、…
 =2L/n (n=1,2,3、…)

媒質が1秒間に何回振動するかを示す振動数νは、音の伝わる速さvをこの波長で割ったものである。したがって、長さLの弦に生まれる定常波の振動数は(v/2L)の整数倍になる。

ν=v/λ=(v/2L)n (n=1,2,3、…)

弦の張り具合によって弦を伝わる音の速さはかわってくるが、ひとつの弦のなかに(v/2L)の整数倍の振動数をもつ無数の波が同時にひしめきあい、これらが重なり合って鳴り響くことで、固有の音色ができてくるわけだ。

同じようなことは他の個体や液体、空気の満たされた容器でも成り立つ。物体はその材質や形状に応じて、固有の振動数を持つ波が生み出される。こうして物体もつ固有振動を利用することで、打楽器や管楽器など、私たちの耳を楽しませてくれる楽器が次々と生み出されてきた。

(今日の一首)

 木曽川を歩けばかわる風景に
 変らぬものは白き御岳

 散歩で堤を歩いていて、大きな鉄橋や樹木も、遠ざかるとみんな小さくなる。そんな中で、振り返ってみて、かわらず堂々と見えるのが雪で白くなった御嶽山である。忙しく変貌する無常の世に、常に変らぬものがあると、なんだか安心する。


橋本裕 |MAILHomePage

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