海津ほろよい日記
湖畔の酒蔵 ほろよい社長の日常

2003年05月17日(土) ノン・アルコール

ノン・アルコールビールがよく売れているそうです。

道路交通法の改正で飲酒運転の罰則・罰金が厳しくなったためで、料理と一緒にたのしめる、酔わない大人の飲み物が求められているのでしょう。

酔わない日本酒は先だって、石川県の「福正宗」さんが「宴会気分」という吟醸風の商品を販売開始されましたが、残念ながら私はまだ口にしたことはありません。

酒質設計の面から言えば、アルコールというのは、ちょうどバックボーンのような骨組みの部分にあたり、アルコール分を薄めていくとその骨組み部分が希薄になり、頼りない味わいになってきます。

それを補強するのが、炭酸の刺激か、クエン酸、コハク酸などの酸味、あるいはホップに代表される苦味になるわけです。

ビールの場合は、ノン・アルコールにしても、炭酸の刺激と、ホップの苦味が味わいの中に残っており、比較的容易に酒質設計ができると思いますが、日本酒はそういうわけにはいきません。

ノン・アルコールどころか、アルコール分5〜10%の低アルコール清酒にしても酒質設計がむつかしく、かって、滋賀県の蔵元の研究会で低アルコール酒を20点程度購入して、きき酒をしましたが、お金を払って、もう一度飲んでみたいというものは数点程度でした。消費者さんも「きわもの」イメージが強く、商品として成功している例もあまり耳にしません。

基本的に、こういう研究は優秀なスタッフがいる大手の酒造メーカーにまかせ、わたくしどものような零細蔵元は、低アルコール清酒やノン・アルコール清酒には手をださないほうが賢明だと考えています。

むしろ、飲んだら酔う従来型清酒の、味わいや風味を追求してくことが大切だと考えています。

なるほど、料飲店でお酒を飲むお客様が減り、廃業に追い込まれた飲み屋さんもけっこうあります。弊社の売上も、特に地元の居酒屋さんや家庭でお使いになられるレギュラーの金紋本醸造(いわゆる上撰クラス)や、銀紋普通酒(いわゆる佳撰クラス)の売上は、前年対比を下回り苦戦しています。

しかしそれは、新しい商品展開や、販売チャンネル、得意先の開拓、提供方法の提案などで対応していけばよいのです(ありふれた考え方なのですが、会社の幹となる商品戦略は本道を歩むべきで、奇策では対応できません)。

最後にクイズをひとつ、「完全に止まっている時計と、1日に1分ずつ遅れる時計とどちらが正確でしょうか?」








答えは、1日に2度正確な表示をする「完全に止まっている時計」です。
(たしか出典は、1970年代にベストセラーになったカッパブックスシリーズの多胡輝『頭の体操』だったと思います。)

市場の浮き沈みにいたずらに右往左往することなく、確固たる自分のスタンスを堅持していきましょう。ただし情報のアンテナは高くかかげ、敏感に。

















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