この稼業、けっこう五感に頼るところがあります。
丸二日かけて麹をつくるときには、麹の温度はもちろんのこと、現在でも「甘香」とか「おはぐろ臭」とか「栗香」など、麹の育成にともない漂ってくる香りを目安にしています
お米を蒸したときも、その蒸し具合を「ひねり餅」をつくって米の芯が残っていないかチェックしますし、手を蒸米にいれて、蒸したお米のコワサを判断します。
もろみの状態を見るときも、櫂棒を入れて撹拌し、棒を通して伝わってくる感覚からサバケが良いとか悪いとか判断します。
この冬、あるお酒の会に参加したとき、若い看護婦さんと同席になり、そんな話をしていると、「患者さんをお世話しているとバイタル(体温とか、血圧とか体の状態をあらわす数値)が正常でも、なにか元気がないとか、おかしいなと感じることがある、若いお医者さんは数字だけ見て気のせいだというけど、往々にしてそんなときは患者さんの状態が急変することがある」そうです。
現場にいて、五感を働かせて仕事をしていると、第六感まで研ぎ澄まされてくるのだと思います。職人さんの勘というのは、空想的な、神がかり的なものではなく、現場を際限なく積み重ねることによって得られる現実主義の延長線上にあるものなのかもしれません。
本や、テレビや、インターネットなど間接的な情報では伝えきれないものが、現場にあることを、常に心しなければならないと思います。
間接的な情報で生半可にわかった気で入ると、手ひどい失敗をしてしまうことがありそうで、徹底した現場主義がお酒の世界には必要だと考えています。
明日より1泊2日の予定で、兵庫県中町と徳島県阿波町の山田錦を五感をはたらかせて見学してきます。その報告は日記にて。
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