「どぶろく特区」なるものが巷を賑わせています。
民宿を経営している農家が自家製の「どぶろく」を製造して、宿泊したお客さんに提供したいのだけれども、現行の酒税法では「どぶろく」は「雑酒(清酒ではない)」のカテゴリーに属しており、年間最低6000リットル製造しなければならないので、到底農家の片手間で造ることができない。
酒税法を改正して全国一斉に「どぶろく」の最低製造量の規制をゆるめられないなら、構造改革特区として「どぶろく特区」に指定してもらい、その地域内だけでも最低生産量を少なくできないかというのが「特区」推進派の考え方です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ これに対する、前財務大臣の塩川さんの見解は以下の通りです 塩川財務大臣閣議後記者会見の概要(平成15年2月21日(金)/財務省ホームページより抜粋) 問)総理が熱心だと思うんですけれども、構造改革特区の関係で「どぶろく」を特区として認めたらどうかというようなことがあるんですが、これについては大臣はどのように思われますか。
答)まあ、これはもう僕は、すぐにですね、開放すると言っとんです。今、あれでしょう、主税局のほうも党のほうと調整して、大体そういう方向になってる。田舎の人の楽しみだからな、1つはな。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ところが、財務省から出てきた「どぶろく特区」実現のための条件は以下のとおりで、下にほろよいが解説をつけました (1)酒税負担の減免はしない (解説)1リットルあたり98.6円(アルコール分13%未満)、12%を超え1%増すごとに8.22円が加わります。
(2)どぶろくの毎月の納税申告や製造販売の記帳を確実に行う (解説)仮に日本酒と同等の記帳を義務付けられるとしたら、1つの仕込みごとに使用した白米の量、水の量、麹の量、出来上がった「どぶろく」の数量とアルコール分を分析して記録します。 また、「どぶろく」の発酵に使う容器(現実にはポリバケツか梅干に使うカメになるのでしょうが)は、1個ずつ実測検定し、容器の上端から2ミリきざみで、空寸と実容量の対照表をつくらねばならないでしょう。 できあがった「どぶろく」を何月何日に何リットルお客様に提供し消費されたか記録し、月ごとに集計、翌月に消費リットル数と算出した酒税報告書を所轄税務署に提出、翌々月にその税額を納付することになります。 もし、万が一雑菌が混ざってどぶろくが呑めなくなったら、所轄税務署に連絡し、廃棄の記録をつけねばなりません。 もしかしたら、数年に一度は税務署から記帳が完全であるか検査においでになるかもしれません。
(3)酒税納税の確かな担保がある ちゃんと酒税がはらえるか、経営状態などのチェックがはいりますが、年間1000リットル造っても(アルコール分13%未満ならば)支払う酒税は98.600円程度なので、これは比較的簡単にクリアできるでしょう。
(4)不適格業者を防ぐため、他の免許の要件を満たしている これは「他の免許の用件」がなにを指しているのかわからないので、何のことやらわかりません。きちんと「酒税がはらえる業者」であることを求めているのだと思います。
(5)どぶろくは特区内で消費し、特区の趣旨に合うものにする これがくせもので、たとえば民宿で「どぶろく」が気に入って、おみやげにもってかえろうとしても、ビン詰めして持ち帰ることができないということになります。
ほかにも「自分が農家として生産したお米をつかって自分のところで仕込む(ということは、農家でない民宿はどぶろくが造れない)」「自分の民宿に宿泊したお客様の飲用にのみ提供する(びん詰めして販売できない)」という、所期の目的以外の使用はできない条件がつくでしょうし、なによりもまず雑酒の製造免許をもらうためには、いやになるほど何枚も書類を出さないといけないでしょう。 所轄税務署も初めてのことですから、おそらく国税局かその上にまで実務上のやりとりがあるでしょうから、そんなにスムーズに実現する話ではないように思います。 民間と政治家の斬新な発想に対する、官のスムーズで柔軟な対応がもとめられています。「日本を活性化させたい」とみんなが思っているのですから、協力しあってよい「どぶろく特区」を造ってもらいたいものです。
ちなみに、ほろよいは「どぶろく」解禁派です。ちゃんと酒税をはらって美味しい「どぶろく」をつくれば、まずい「パック酒」や「経済酒」は排除されるでしょうから。口の肥えた消費者さんが増えたほうが、地酒屋としてはよい環境だと思っています。 素人には負けないぞという自負もありますしね。
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