アナウンサー日記
DiaryINDEX|past|will
人生は、車の運転のようだ。
生まれてからしばらく・・・少なくとも子供の間は、 彼(彼女)は自分では運転することができないから、 誰か大人の車に乗せてもらう。 多くの場合、それは親だろう。
やがて運転免許を取得できる年齢になれば、 彼は自分の車なりオートバイなりで、一人で走り出すようになる。 彼が乗る車の種類は、ある程度初めから決まっている。 スピードが出るスポーツカータイプもあれば、 悪路に強い4WD、荷物をたくさん載せられるトラックタイプに 軽快なオートバイと、かなり個性的だ。 車は後々チューンナップすることも可能だが、 逆に故障することもあるから、注意が必要だ。
ともあれ、親の車から降り、 初めて自分で運転したときの心細さ、 そして限りなく自由な感覚の素晴らしさ! 彼はそのとき、世界のすべてを手に入れたような充実感を味わうのだ。
だが、大空を舞う鳥たちとは違い、その自由には制限があることにやがて気づく。 車は道路の上を走るように出来ているからだ。
道路には信号もあれば、横断歩道もある。 道路には、厳然としたルールが存在しているのだ。 ガソリンだって補給しなければいけないし、 時にはオイル交換も必要だ。 あくまでルールの範囲内での自由であるということを念頭に置いて、 ハンドルを握る必要がある。
中には4WD車やオフロードバイクで道なき道を進もうとする者も現れるが 相当のリスクを伴う行為であることを覚悟しなければならない。
ところで彼は車に乗って、どこに行こうとしているのだろう?
それは彼自身にも分からない。 彼は目的地を探しながら運転を続ける、車に乗った旅人なのだ。
走っているうちに彼は経験を積み、運転の仕方や道路を覚えていく。 やがて仲間が見つかり、 それが異性ならば結婚することもあるだろう。 結婚では、同じ車に乗り込むこともあれば、 互いの車に乗ったまま併走するケースもある。 併走している場合、時にはY字路で別れることもある。 あるいは不慮の事故でパートナーを失う場合だってあるだろう。
ところで、道路の行く先は、少し高いビルに登れば、ある程度見渡せる。 ビルに登る特殊な力を持っているのが、占い師や霊能者と言われる存在なのかもしれない。 特殊な力を使って高いところから道路を眺めれば、 ドライバーにはまだ見えていない信号や、 曲がり角を突進してくる暴走車を見ることが出来るから、 的確に助言をすることが出来るのだ。
だがどんな占い師にも限界がある。 たとえ街中で一番高いビルに登っても、道路を見渡せる範囲は限られているからだ。 占い師の位置からでは決して見えない曲がり角や、ブラインドに潜む危険や幸運はたくさん存在するのである。 実際に行ってみなければ分からない。 占いや霊感は、万能ではない。
では、はるか上空・・・神の目を持って、この世界全体を見下ろして見ればどうだろう?
神の目からは、この地球に、網の目のように張り巡らされた道路が見えることだろう。
ドライバーからは障害物だらけに見える道路も、あと少し辛抱して進めば、 素晴らしい景色が広がっていることが、神の目には見える。
我々ドライバーは道路を走っている。 定められた道のりを走っているようで、交差点はたくさんある。
ハンドルを握っているのは我々自身だ。
君はどこへ行く?
俺は・・・。
|