本日は、板橋まで行ってまいりました。 板橋区立美術館 「ディック・ブルーナ展」 http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/
いわずと知れた、ミッフィーの作者。 ご本人も、絵に描いたような絵本作家のお爺ちゃん、 といった感じの好々爺。ラヴ。
2年ほど前に、新宿の百貨店で開催された展覧会を観にいったし、 最近、「芸術新潮」で特集が組まれたばかりだったので 色々ネタは仕込んであったのですが、板橋区立美術館のコンパクトで アットホームな雰囲気が上手く展示内容と嵌って、小規模ながら 非常に見応えのある展覧会でした。
母国オランダでは、絵本だけでなく、本の装丁やポスター、 街のシンボルマークまで手がけ、グラフィックデザイナーとしても 高く評価されている、ディック・ブルーナ。
日本での展覧会は、絵本のミッフィーの愛らしさのみを フューチャリングして、乳幼児向けに偏りそうですが、 モダン・アーティストとしてのブルーナを評価していて、 館内の内装も、展示内容に合わせて、ブルーナ・カラーの 柱などを、白を基調とした館内のアクセントとして配置したりと、 非常にポップで、お洒落な扱いが目立ちました。
そして、美術館の白壁に、ミッフィーの目と口が。
もともと、ディック・ブルーナの作品のコンセプトは、 極限の簡略化とテーマの明示 だそうで。
例えば、ミッフィーに使用される色は、ブルーナ・カラー と 呼ばれる、赤・青・黄・緑・茶・グレーの6色 で統一され、 それぞれの色に意味があるし、イラストも、空白部分を活かし、 余分なものを一切省いた、最低限のラインで描かれています。
まさに侘び寂の境地。
ただ無造作に描かれたように見える、黒楕円2つと×ひとつでも (実際は、計算されつくした絶妙な配置なんですけど) それはミッフィーを表す記号である訳です。
この辺りの感覚って、本当に 現代アートの真髄 って感じがする。 それをグダグダした判りにくい解説文などでなく、目にした人に 感覚的にスルッと自然に判らせたのは、お見事。
国立や都立の博物館に比べれば、お金も掛かっていないし 小規模な展覧会だけど、センスひとつで、多くを言葉で語らなくても 芸術家の世界観を、大人にも子供にも、こんなに楽しく伝えることが 可能なのだと、強く感じました。
なんか、すごくいいもの見た気分。感動して涙出るかと思った。
日本の美術館て、綺麗な箱(施設)を作って、豪華なもの(作品)を 飾っとけばいい、という考え方がまだまだ根強く残っている気がするけど、 人間は雰囲気に騙される生き物なんだから。
作者の意図するテーマを判り易く伝えるための手段(展示の方法)の 工夫って、もっと大切に考えていいと思うの。即物的な意味でもね。
最近、近現代の作品を扱った美術館を中心に、そういう動きが 活発になってきていて、例えば、付属のレストランで、展示内容に合わせた テーマの料理を用意したり、一風変わった展示会場のレイアウトだったり、 イベント特製グッズを販売、というのが珍しくなくなってきているけど、 こんなにドンピシャな展覧会は、なかなかない。凄いよ。
1Fの特設喫茶(中学の文化祭の喫茶店レベルだけどね)で ミッフィーチョコケーキと、一日限定70個ミッフィー型パン が販売され、特設売店では、山のようなミッフィーグッズ販売と、郵便局が出張して、 ミッフィー&ブラックベア消印で郵便が出せる という (もちろん「ふみの日」ブルーナ切手とポストカード販売あり)スペシャルサービスつき。
まさに至れり尽くせり。行って絶対に損はなし。 アットホームな手作り感が、またブルーナの世界に嵌るんだよね。
ところで、ミッフィーのトリビアをひとつ。 日本では昔、「ふわふわうさこちゃん」 という名前だったミッフィー。
本家本元のオランダでは、ナインチェ・ブラウス という名前だとか。
オランダ語で、「ナインチェ」は「小さなうさぎちゃん」、 「ブラウス」は「ふわふわ」 という意味らしい。 「ミッフィー」というのは、英語圏での名称なんだってさ。5へぇ。
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