思考過多の記録
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少し前の話になるが、7月の公演が終わって1週間が経った頃、出演者の1人から手紙が来た。 僕自身は、本番終了の2,3日後から、出演者の全員にメールを送っていたのだが、それに対してはほぼ全員がメールで返事をしてきた。 その中で、彼女だけは、直筆の手紙をよこしたのだった。 思い起こせば、彼女はそのままDM葉書として出すことができる7月公演のフライヤーに、わざわざお客さんの1人1人にメッセージを着け、封書で出していた。その方が、機械的に思われず印象もよいだろうと、出演者一同、その気配りに感心したのだった。
中を見ると、便せん2枚に手書きで、今回の芝居に対する思いなどが書かれていた。役者としても、個人としても、悩み、苦しみ、もがきながらも、何とか上演できたことはとてもよかった、と書かれ、お礼の言葉と僕に対する激励の言葉が並んでいた。 その簡潔で飾らない言葉の中に、僕は彼女の演劇に対する、そして人に対する真摯な態度を読み取ることができた。 彼女は、こういう手紙を、僕だけではなく、出演者一同に書き送っているのだろう。それぞれの相手に合わせた言葉を選びながら。
彼女はときにお茶目でとんでもないポカをやったりするけれど、基本的にはとても真面目で気遣いのできる、しっかりして素敵な女性である。 それが、手紙という存在/行為と文面から伝わってくる。 いい役者なのに人間としてはどうなのか、と思わせる人もこの業界には多いが、そんな中、いい役者でありながら人間的にも真っ直ぐな彼女は、なかなか貴重な存在だ。 勿論、その真っ直ぐさが、演劇に対する態度にも表れてくる。 彼女とはこれで2度目なのだが、また次も一緒にやりたいと思っている。そう思わせる何かを、確実に彼女は持っている。 手紙を受け取って、僕はそのことを改めて実感したのである。
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