思考過多の記録
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2009年03月06日(金) |
検察ファッショを許すな! |
小沢一郎民主党代表が、準大手ゼネコンの西松建設から違法な政治献金を受け取っていたとして、小沢代表の公設第一秘書が逮捕されたというニュースが、週末から週明けにかけて日本列島を駆け巡った。 小沢代表は翌日記者会見をし、「自分にはやましいことはない」と疑惑を否定した。 報道の内容を見ると、政治献金はダミーの団体を通して小沢代表の政治団体になされており、これが企業や政治団体以外による献金を禁止する政治資金規正法に違反するのだという。 また、朝日新聞の報道では、西松建設はダム工事の受注に便宜を図ってもらう目的で献金を行っていた疑いがあるという。 もし事実とすれば、贈賄容疑も出てくる。 おまけに西松建設は、下請け会社に小沢氏への献金分を上乗せした工事代金を支払い、その分をダミーの団体に寄付していたという疑いや、小沢氏の第一公設秘書が西松建設側に献金の「催促」をしていたという証言まで出てきた。
真実の解明は、今後の捜査を待とう。 しかし、今回の一件で見逃してはいけないポイントが2つある。 1つは、検察もまた国家権力の一部であり、中立ではあり得ないこと。2つ目は、何故この時期にこの一件がリークされたのかということである。
一つ目のことで言えば、「検察は弱いものの味方」という考え方が庶民にはある。しかし、それは願望に過ぎない。 今から20年以上前に、政・官・財を巻き込んだ一大疑獄事件である「リクルート事件」というのがあった。新興企業だったリクルートの社長が、ビジネスを有利に展開できるように、政・官・財の有力者達に値上がり確実な未公開株を譲渡していたという事件だった。 この事件では、元内閣総理大臣・中曽根康弘氏をはじめ、自民党の大物代議士の名前が何人も挙がった。 しかし、実際に検察が起訴したのは、文部事務次官、労働事務次官、そして政治家では中曽根内閣の官房長官だけだった。 「政界ルート」の捜査には圧力がかかったという味方が専らだった。 また、当時も今と同じように解散が近かったため、選挙に与える影響を考慮して、検察が立憲を自粛したとも言われた。 ことほどさように、検察は「政治的」に動く。検察庁長官は列記とした官僚であり、その上司は政治家だ。 今回、民主党がすぐに「国策捜査だ」との見解を発表し、多くのメディアもそれを疑うような報道をしたのは故なしとしない。 たとえ麻生政権の誰かが直接検察に指示しなかったとしても、検察は「空気を読む」。ことに、政権与党の空気を。 このような政治疑獄でなくても、検察は勝つのが難しそうな裁判となると、遺族や被害者の感情を無視して「控訴断念」をすることがよくある。また、事件の核心部分を「立証が困難」として裁判で争わなかったりもする。 要するに、「お役所」なのだ。 そんな検察に、僕達は過剰な期待を抱いてはいけない。 報道によれば、西松建設は小沢氏以外にも、自民党の森元首相をはじめ、何人かの国会議員に献金をしていた。 額が突出していたとはいえ、何故小沢氏だけ立件したのだろうか。 そこには、麻生政権との「あうんの呼吸」があったと勘ぐられても仕方があるまい。 まるでそれを裏付けるのかのように、今日の報道では、麻生政権の高官が「自民党の強制捜査はない」と言ったという記事が載った。 語るに落ちたとはこのことである。
二つ目の、「何故この時期に」というのは、もう明確すぎるくらい明確である。 昨年からずっと、麻生政権と与党は追い詰められっぱなしだった。閣僚の辞任、本人の発言のぶれ、年金問題、そして評判の悪い定額給付金と増税等々、野党からの攻撃材料には事欠かなかった。 支持率も下がりっぱなしで、今や10パーセント台、不支持率はのきなみ7割前後というていたらくである。 これに引っ張られるように、自民党の支持率も低下、今や各種世論調査で民主党に逆転を許している。さらに、「次の総理にふさわしい人は?」という問いに対する答えは、麻生氏より小沢氏の方が上という惨憺たる有様だ。 「今選挙をすれば、確実に負ける」 自民党・公明党の誰もがそう思っていたに違いない。そして、逆に民主党は、「今度こそ政権交代の千載一遇のチャンス」と考えていただろう。 麻生政権は解散権を行使できず、いずれは「麻生おろし」の声が高まり、のたれ死ぬ運命だった。 そこに、今回の「小沢スキャンダル」である。 自民党にとってはまさに「神風」であろう。 ちょうど20年度補正予算と21年度予算が国会を通る目処が立ったことだし、予算成立を待ってすぐに解散すれば、イメージダウンした民主党との戦いは有利に進められるだろう。 また、もしかすると民主党の中から「小沢氏では戦えない」と「小沢おろし」の声が出て、党内が混乱し、選挙への力がそがれるかもしれない。 麻生首相は今回のことが明らかになった際の記者との「ぶらさがり」インタビューで、 「このことで政治不信が国民の間に広がるとしたら、悲しいことだ」と涼しい顔でコメントしていた。 しかし、内心は違うだろう。 「しめしめ、国民の間に政治不信が広がれば、『どこに投票しても同じだ』『自民党も民主党も変わらない』という考え方が広がって、無党派層が投票に行かない。そうすれば投票率が下がり、足腰が弱い民主党よりも、公明党・創価学会の組織票がある我が方が有利だ。選挙には負けない。」 こういう計算が働いたに違いない。
政権交代がかかった選挙の前に、次に総理になるかも知れない人物の「事件」を誇大に取り上げることで、政権交代を阻止し、与党から点数を稼ごうというのだろう。 この種のことは、所謂「形式犯」で、わざわざ公設第一秘書を逮捕したり、事務所を家宅捜索したりする程のものではないというのが一般的な見方だ。 また、ゼネコンと政治家、なかんずく与党・自民党との癒着は今に始まったことではなく、手口はもっと巧妙に、多くの議員が手を染めていることであろうと思う。 それを、わざわざ」「次の総理」を選挙間際にターゲットにしたというのは、先ほどの政府高官の話ではないが、タイミングとしては絶妙で、そのほとぼりが冷めないうちに麻生総理が解散総選挙に打って出る選択肢を与えたことになる。 そしてもし、その選挙で目論見通り自民党・公明党が勝てば、大手を振って「民意」の正当性を笠に着た横暴が国会で繰り広げられることは明らかだ。 このような社会悪に検察が手を貸すとは言語道断である。 今のところ検察の公式見解は、「時効が迫っていたから」ということであるが、だったらもっと前にやってもよかったのだ。 あまりにタイミングがよすぎる。「何かある」と思うのが普通だろう。
再度確認しておこう。 検察もまた、国家権力の一部である。 決して我々の味方ではない。 そして、正義でもない。 そして、何故検察が自民党の窮地を救うようなことまでするのかといえば、これまで政権交代がなかったからである。 だから自民党にしっぽを振るような体質が出来てしまったのだ。
ある政治家が、「検察ファッショ」という言葉を使ったことがある。 「疑惑」があるとされ、強制捜査が入れば、それだけでもう悪いイメージが出来上がってしまう。 犯罪者を1人作り上げることは、検察にとっては容易いことなのだ。 こんなことを許してはならない。 権力の一部である検察に、権力を裁くことはできない。 これから起きることを、我々はよく見ておくことだ。 誰が陰で笑っているのか。 検察の捜査は、皮肉にもそれをあぶり出してくれるかも知れない。
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