思考過多の記録
DiaryINDEX|past|will
「目指せ、確定申告」 これが今年の僕のキーワードである。 本当に確定申告をしている人から見れば、あんな面倒なことをなぜ目指すのか、と思われるかもしれない。しかし、僕にとって確定申告は憧れである。それは「自由人」の象徴だからだ。
僕のような、所謂「給与所得者」にとって、確定申告は無縁である。「年末調整」というのがあるが、それは税金の還付であり、自分の所得を自分で把握し、自分で税額を申告するのとは性格が違う。 「給与所得者」は、文字通り会社から毎月決まった額の「給与」をもらう。そのかわり、毎日決まった時間に出社し、決まった時間の労働力を提供することを求められる。 また、保険料を決まった額、毎月の給与から「天引き」されている。 その代わりに、退職後は「二階建て」の年金を受け取れるし、健康保険もあるので、在職中は医療費の自己負担もたいていの場合は少なくてすむ。 しかし、税金は「ガラス張り」のため、やはり規定の額が毎月「天引き」されていく。 また、職種によっても異なるが、基本的に正社員には「ボーナスがある。 また、今回のような未曾有の不況や会社の業績によってなくなる場合もあるが、基本的には「定期昇給」があり、年齢を重ねると自動的に収入もアップする。 要は、決まった収入が約束されているので、将来の生活設計も立てすい。 「街金」などではなく、名のある金融機関から融資を受ける場合でも、安定した収入があることが条件になる。
自由人となるとそうはいかない。 仕事がいつもあるとは限らないし、その仕事の量も月によって、また年によってまちまちだ。 決められた時間に働かなくてもいい代わりに、収入も定まらない。 また、「納期」を守らなければ、次から仕事が回ってこない可能性もある。 年金も1階の「国民年金」のみ。収入が多くても少なくても国民健康保険の保険料や介護保険料は徴収される。 自分の裁量で仕事が決められると思いきや、ある程度ちゃんとした生活を送るためには、不本意な仕事も受けなければならない場面もあるだろう。 また、決められた労働時間がない、所謂「裁量労働」のため、自分にネームバリューがない場合、もらえる金額を労働時間で均すと、時間あたりの金額は低くなってしまったりする。自由時間は自分で作り出さなければならない。 要するに、自分を縛る「組織」というものがないので「自由」はあるが、それだけリスクも大きいというわけだ。
車はトヨタ、電話は固定も携帯もNTT、買うものは殆どが有名メーカー品(唯一パソコンだけはアップル)という「安全運転指向」の僕にとって、確定申告をする職業の人達、就中芸術系の人達は、自分の才能で食っているという面で憧れだ。 その人の才能や作品を買う人や組織があるというのは凄いことである。 そうして得た収入を、年度末に確定申告する。 何ものにも縛られず(人間関係に縛られているかも知れないが)、自由に、自分の才能で生きながら税金を払う。素晴らしい生活ではないか。 ただし、「リスク」を僕が引き受けられるかというと、そこがネックになる。
僕が「自由人」のよさを思い知ったのは、病気で休職した時だった。 あの時は、医者の許可もあって芝居作りは続行していたが、会社は当然行かなかった。 毎朝決まった時間に起きて満員電車に揺られ、決まった時間に会社に着いて、与えられた仕事をやり、残業をするにしても決まった時間になると退社して家に帰る。 その繰り返しの閉塞感に、僕は嫌気がさしていたところだったのだ。 だからこそ、復帰までの9ヶ月間、僕はそれまで感じたことのない開放感に満たされ、充実した幸福な時間を過ごすことができたのだ。 僕の病気は皇太子妃雅子様と同じ「神経症・適応障害」だが、香山リカ氏によれば本来この病気は、原因となっている因子を取り除けば半年ほどで寛解するのだそうだ。 しかし、僕は復帰後半年で「再発」した。そこには「鬱」の要因があるというのが香山氏の分析だが、僕自身の考えは、実は僕が適応できなかった環境とは、この「正社員」の生活そのものだったのではないか、ということなのである。 ただし、休職中に健康保険組合から「傷病手当金」が支給され、リハビリ出社後には会社から「扶助料」が支給されて、なおかつ地位が保たれているのは、正社員だからに他ならない。 もし「確定申告」が必要な身の上だったら、この間は無収入となり、おまんまの食い上げになってしまう。
リスクを取らなければ冒険はできない。 だから、次回の僕の芝居の公演は、ある意味大勝負であり、かなりのリスクを伴う。 もし成功すれば、それはサラリーマン人生の出口への第一歩になる。 しかし、失敗すれば、借金だけが残る。それを返すために、一生サラリーマンを続けなければならない。 本来小心者の僕が今回リスクを取る方に踏み切るのは、「人生は一回だけ」だと思うからだし、「やるとすれば今しかない」と思うからだ。 本当はもっと前にやっておくべきだったが、それはいっても仕方のないことだ。これ以上遅れると、もうリスクは取れない。 だから今、なのである。
近日中に、正式な公演日程をサイトで発表する予定だ。 もう劇場は押さえてしまった。 来週には書面での契約となる。 もう、後には引けない。 どれ程の「リスク」があろうとも、もう前に進むしかないのだ。 やるからには勝ちに行く。 自分の才能で生き残る世界へいくのだ。
目指せ、確定申告!
|