問ひ掛け
 「アタシの事如何想ってる?」
 何度もそうあの娘が僕に訊く。
 「大事な人だと想ってますよ。君は僕で僕は君でしたから。君が完全に居無くなったらきっと僕は泣くと想ひますよ。君を失った僕が可哀想だから。」
 何度も僕はそうあの娘に答える。
 形だけの言葉だと判ってゐて彼女は僕に自分の價値の重さを問ふ。
 形だけだと判って居るから心から彼女の事を想ふ發言で無くとも其の言葉の輕さを指摘する事は無い。

 「私の事を憎んでる?」
 とある女性に以前そう訊かれた。
 「ええ、貴方は僕にとって大事な人ですから。」
 いきなりそう訊かれて言葉に詰まった僕はそう答えた。
 僕は少し離れた場所に佇む彼に聽こえる樣にはっきりと應えた。
 にっこり微笑み僕に問ひ掛ける彼女の瞳は僕では無く彼を見ており、彼女は僕が如何返答するか知ってゐて其の質問を投げ掛けてゐたから。

 「僕の事を如何想ってる?」
 違ふ人がこう僕に訊いた。
 「大事な人であるとは判ってますよ。君と僕とは血は繋がって無いけれど既に家族の樣な間柄になつてしまってゐるのだから。」
 僕は下手に言ひ繕いはせずにこう答えた。
 そして、僕の言葉の裏に在る筈の僕の意圖を讀取らうとした相手に更に細かく追求された。
 裏の意圖など僕には無く、唯事實已を僕は傳へたといふのに。
2003年01月10日(金)
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