
ひとりごと〜リターンズ〜
不知火
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| 2001年07月31日(火) ■ |
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| 「夏の漂泊編」 第1部 �‖臉齋未魃曚┐� |
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天気 曇り
北アルプスに来るのは3年ぶりだ。 随分長い間山から離れていたものだと思う。 もちろん関西近郊の山には登っていたし、岩登りもしていた。 それはそれで楽しい日々だったし、自分にとって大事な時間だったと思う。 だがそれで完全に満足していたかと言うと、容易に頷くことは出来ない。 自分の中の何かが不完全燃焼を感じていた。
だからかもしれない。 前日までの準備の間中、眠れない夜行バスの中、そして大雪渓を登っている今も、 俺の胸中はこの夏への期待でいっぱいだった。
日本3大雪渓との一つと云われる白馬大雪渓。 俺の遥か前を歩くのは、頂上近くにある宿舎と下界を毎日往復する山の郵便屋さん。 その名を源三さん(仮名)。
「この程度で疲れてて、山やってたなんていうんじゃねぇ」 辛口な激励を残して彼は俺をどんどん引き離していった。 いや、源三さんが早いんじゃない、俺が情けないんだ。 現に彼はずっと同じペースを保っている。
畜生。 見てろよ、追いついてやるぜ。
独白とは裏腹に呼吸はどんどん苦しくなっていき、足取りもさらに重くなっていく。
源三さんは休憩を取らない。 白馬尻荘から頂上の宿舎までノンストップだ。 1時間歩くごとに10分の休憩を常としていた俺のやり方とは違う。
源三さんは軽装だ。 背中に背負った小さなザックは右肩だけを通し、軽々と歩いている。 若い頃は強力(ごうりき:重い荷持を持って上るのを仕事とする)などもやっていたらしいが。 対して俺は少なくとも10キロ以上はある大きめのザックを背負っている。 山小屋泊まりをしたことがなかったので必要ないと思われる寝袋なども持ってきてしまったためだ。
源三さんは長靴で歩く。 どうして長靴で大雪渓を滑らずに歩けるのか不思議でしょうがない。 俺は重登山靴を履いていても、何度もバランスを崩しているというのに。
源三さんは毎日頂上を往復している。 くどい様だが俺は3年ぶりに2900m級の山に挑戦している。
どだいまともな勝負になるはずはなかったのだ。 勝ち負け等というのはもともとおかしいのだが、 俺の中で「ついていけなかったら負け」という訳のわからん方程式が既にあった。
なにがなんでも追いついてみせる。 そんなことを呟きながら、高山病対策にむしろゆっくり歩くという計画は完璧に忘れていた。
結局俺は源三さんに追いつくことはなかった。 途中まで遥か遠くで余裕をかましていたその姿すら見えなくなった。 だからといって俺が遅かったわけでは決してない。 数多くのパーティーを抜き去って歩き進み、 コースタイムでは普通4時間かかるとされているところを2時間半で登りきった。
源三さんに追いつけなかったことはやたらに悔しかったが、 頂上の宿舎にたどり着いた時にはそれをこえる歓びを感じた。
これから約26日間、俺はここで働いて、生活して、時には山を歩いて・・・・ 様々な期待を抱きながら俺は、小屋と呼ぶには随分と大きなその宿舎の扉を開いたのだった。 不思議と不安はなかった。
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