
ひとりごと〜リターンズ〜
不知火
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| 2001年08月06日(月) ■ |
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| 「夏の漂泊編」 第1部 ��転機 |
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天気 晴れ
今まで触れていなかったが、厨房の担当の従業員は岸本さん(仮名)という。 岸本さんは基本的に優しい人で、指示する時の口調も丁寧だ。 反面、存在感が薄く、厳しさが足りないところもあるように感じられた。 ある人に言わせれば人付き合いが苦手なんじゃないかということだが、そうかもしれない。
その岩本さんだが、実は身体があまり丈夫そうではない。 はじめて見た日から風邪を引いていたし、飲み会の席でも姿を見なかった。
そんな岸本さんの下で厨房のバイトは動いていたわけだが、 その中の1人、山田君がとうとう天狗の頭(白馬岳の南、山二つ越えて2時間半ぐらい)に向かって出発する日が来た。 支配人に直訴した結果は朝になって聞かされた。
「天狗で足を怪我した奴が1人いるらしい。」 つまり山田を代わりに送り込むと言うことだ。 頂上の宿舎も、天狗の山荘もどちらも村営である。 だから何処で働いても給料は同じところからでるし、その額も同じだ。 上の(というか下界にいるから下のか?)人にとっては何処で働かせても同じなのだろう。
朝の掃除が終わった後、部屋では山田が荷造りをしていた。
「お、そろそろ出発かい?」 「ええ、お世話になりました。」
まだ一週間目なのに、自分より後から来て、もう去っていく人がいると言うのは不思議な気分だ。 それ以上に不思議なのは、こいつが4,5日の付き合いとは思えないことだろう。 もっと長いことつきあってきて、これからもずっと友達でいそうな、そんな感じのする奴だ。
そこへフロントから放送がかかる。
“業務連絡、業務連絡。アルバイトの山田君。至急フロントまでくるように”
支配人直々の放送だ。 山田は残りの荷物を一気にザックに詰めて部屋を出る。 途中でフロントから来た坂本に出くわす。
「あ、山田君、支配人がすぐに来いって言ってます。」 こいつは日頃口の聞き方を知らんくせに、時々妙に丁寧になる。 まぁどうでもいいが。
ともかく荷物を背負った山田はいつでも出発できる姿で支配人室を訪れた。
お世話になりました。それではこれから天狗へ向かって出発します。
そう言おうとしたに違いない。 が、彼がその言葉を発する暇はなかった。 支配人が妙に楽しそうな顔でこういったからだ。
「実はあの後、下(←下界にある公社)と天狗と話し合って、 それぞれの事情が変わってきて、 今日お前を天狗にやらなくてよくなった。」
は?
明らかに不意打ちを食らった顔をしている山田。
「だから、荷物をまとめてたら悪いと思って少しでも速く呼んだんだが・・・」 結果として山田はあおられた形になってその分早く荷物をまとめたわけだ。 少しの間があいて周囲にいたバイト、従業員から爆笑がもれる。 山田は少しばつの悪そうな、しかし嬉しそうな顔で照れていた。
そう、山田君と我々の願いは数奇な「事情」によって叶えられることになった。 しかしその事情とはなんだったのか。 それを俺たちはこの少し後で聞くことになる。
「岸本さんが荷物をまとめています。」
え!?なんで!?
後で聞いた話では、岸本さんは昔から目を悪くしていたらしく、 こうやって下山することは毎年のようにあったらしい。
恐らく、それで人間が足りなくなる分を何とかしようと言うことで山田君の残留が決まったのだろう。 午後には支配人がバイト全員を集めた。 山田の残留。岸本氏の下山を告げた後、バイトの本格的な配属を発表した。 現在の形では厨房に人がたくさんい過ぎる。 なので、厨房から仲村と小嶋さん(仮名)を新館レストランへと異動させることになった。 さらに、厨房の担当を岸本さんの代理で大東さんが行なうことになった。
厨房内でも飯炊き、味噌汁、客食おかず、従食手伝い、ホールのそれぞれに人を配置し、 秦野さんをバイトのリーダー格としてミーティングを行なった。
こうして様々な変化のあった後、夜は長澤さんの誕生日会が催された。 が、俺は休憩室で誕生日会を横目に見ながらノートを前に途方にくれていた。
えっと、ほうれん草の在庫が・・・・
冷凍庫、食品庫の在庫管理を大東さんから命じられてやることになった。 大東さんの考えでは、バイトは管理するよりも参加させた方が楽しく働ける。 ということらしく、これは俺の想いとも一致している。
が、この後しばらく俺はノートと電卓を前に頭から煙を出すことになった。 計算は苦手なんだ!
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