2005年09月30日(金)
あの9月28日へ(4)


本題に入る前に。
当時の状況・・・・というか本音を綴ったノートが存在するので、それを一気に読み返した。
今の自分が忘れていることがあるかもしれない、何かもっと別角度で物事を見ていたかもしれない、
そんな期待を寄せて、15歳から25歳くらいまでの記録を一気に読み返した。
しかし、肝心の「渦中のこと」については、その時よっぽど淘汰されて余裕がなかったのか、
正に「最中」のことに関しては全く記述されていなかった。
その空白の期間は、今思うとあまりに短すぎるのだけれど、自分の体に刻み込まれた感覚としては
「永遠」に匹敵する何かであることは確かで、
たったあれだけの時間を上手にクリアできずに、もがいていたのかと思うと、
自分が如何に未熟すぎたかを改めて知ることとなる。
ただ、毎年毎年、9月28日と12月2日にはそこを自分の節目と感じているのか、
必ずといっていいほど何かしらの記述がしてあった。
そういうのを読み返すと、恐ろしいほどに、自分が事実を確実に隠蔽していこうというのが見て取れた。

これではいけない。

多分、今は自分の居場所がカッチリと定まったので、それも手伝い、
安心して色んなことが書けるのかもしれない。
ただほんの数年前までは、このあたくしにもそれなりの「可能性」があった。
今書いている「彼ら」に再会してしまうことで、人生を変えてしまうような揺らぎが生じたかもしれない。
再会しない可能性のほうが高いには違いないが、それでも、上記の記録文を見る限り、
ビックリするようなタイミングで、例えば街中などで、あたくしはバッタリと「彼ら」に再会している、
そんな事実だけはハッキリと書かれていて、読み返すまで忘れていたくらいだ。
・・・・その時どれだけ揺らいだのか、ということまで。

お目汚しは覚悟の上。
あたくしは心地好い秋風の中、やはり心地よかったあの秋風を丹念に思い出す作業を、
きちんと完結すべく、記憶の糸を解きほぐそうと思います。





実質、あたくしの中では、「9月28日」からほんの2ヶ月ほどしかキラキラしていられなかった。
それ以前も、その最中も、そしてそれ以後も、「永遠」と呼べるほどに長かった気がする。

「ナイフ」を手に入れたことで、完全武装が叶った・・・・そう思い込んでいたフシもあったかもしれない。
不完全でいい加減な思い上がりだった。
「ベール」を脱いでも、寒くはないと虚勢を張っていたようにも思う。
若さゆえの強がりで、体力任せ、勢い任せから出た、その当時は偽りのない気持ちだったとしても。
・・・・多分、自分さえも上手に騙していかなければ、あたくしはあの時既に、発狂していたかも。


シンとの「今までどおり」の生活と並行して、あたくしの傍には
いつもヨシオがいるようになっていた。
仕事まみれで寂しかったあたくしを、隈なく癒してくれたのは、非日常のヨシオだったのだ。
とはいえ、模試の成績は下がる一方。
同じ執行部内でも、きちんと右肩上がり、もしくは平行線を維持している他の3人とあたくしとでは、
ファンデーションからして危なっかしすぎた。
学区内トップの進学校を目指していた会長は安牌、次点進学校を目指しているあたくしとカズコ
いつもはじき出される安全圏順位の中に自分が入れないので、外面的に少々焦っていたものの、
元々、楽天家で野心家でもある彼女と、元来は小心者であるあたくしとの間には、
雲泥の差があるように思えてならなかった。
そしてこの時はまだ、ヨシオがどこへ進学希望を出しているのかを
ハッキリつかんでいなかった。

シンのことは一方的に調べつくした結果、後にあたくしの母校となる高校を志願していた。
ここで甘えみたいなものがでた。

・・・・少々甘んじて、あの高校へ安牌として志願をすれば、また3年間、シンと一緒にいられるのかも。

しかし、このことに関してはシンに想いを告白した時点で、きつく言い渡されていた。


「一緒の高校に行きたい気持ちはあるけれど、努力を惜しんでまでそうしてほしくない。
とにかく頑張れるところまで頑張って、行きたいところに行かなくちゃな。」



尤もすぎて、頷くくらいしかできなかった。正論というのは残酷だなぁ、とも思った。
あたくしは心のどこかで思っていたのだ。
もし自分が本当に死にもの狂いで頑張ったとしても、シンが今の志望校から格上げして、
あたくしと同じ志望校に変えることは、まず、ない・・・・と。
逆に、あたくしが自分でかけたはずのスパートにどうしても乗り切ることができず、
先生や親にあれこれ言われて安全圏の県立に格下げし、更にそこにシンも残留する可能性が50%。
加えて、あたくしが伸び悩んでいるように彼も伸び悩んでいるのだとしたならば、
いくらあたくしが、安全圏へと移っても、彼もまた安全圏を選ぶかもしれない。・・・・70%。
このテの悩みは、自分で何とかするしかない。
同じ高校を目指しているカズコにもギリギリまで言えなかった。
そしていくら仲良く気軽に話せるようになったヨシオにもおいそれと相談できるものではないような気がして
何でもないような素振りをずっと続けていた。
本来ならば残酷なのを承知で、もうすっかりバレてしまったシンとのこれからのことを
彼に打ち明けて、相談に持ち込んでしまうのが一番よかったのかもしれない。
ただ、それをしなかったのは、物凄く身勝手だけれど、ヨシオの気持ちを確実にこちらに向けさせ、
あたくし自身が安心していたい・・・・そういう気持ちが少なからずとも「あった」ということだ。

内心、あたくしはヨシオの志望校がどこなのかは非常に気になってもいたし、
これは憶測に過ぎないけれど、彼はあたくしが自分と同じ高校を志望していると思っていたかもしれない。
学科試験の結果はともかく、3年間培ってきた「職員室での評判」は、
確実にあたくしの方に分があるように、外野にもそう見えていただろうから。

何も上手に仮面を被ってきたのはあたくしだけじゃなくて、ここに揃っている4人全員が、
それぞれに、周囲を誤魔化しつつ、騙しつつ、それぞれの方法でここまで来ていたのかもしれない。


そういう裏側を知ってか知らずか、ヨシオ自身は非常にマイペースであった。
晩秋。すっかり仲が良くなってしまった執行部。
学年でただ1人、あたくしのことを大っぴらにファーストネームで呼び捨てる少年は、彼だけだった。
ひそひそと内緒話をする時、記憶が確かならば、トモくんともそうしていたかもしれないが、
あくまで体面上、誰かの前であたくしのことを呼ぶ時は、せいぜい誤解のないように、姓で呼んでいた。

ヨシオとの仲は、当時のあたくしじゃなくても、とても危なっかしい関係性のように思える。

幼馴染でもなければ、何か想いを確かな形で伝えあったわけでもなく、
ただの「同士」とはいえ、少々接近しすぎているのではないか・・・・この時、あたくし自身が危惧を始めた。
髪の長さやシャンプーの香りをそっと指摘できるくらいの距離。
これはもう、ほぼ密着しているのに近かった。
自分で香りを演出できるくらいに大人でもなければ、そういったものに興味すらも持っておらず、
加えて、髪の長さは、校則という壁でがんじがらめにされていたこの時代。
いつか、自分の気の済むまで髪は伸ばしてみたい・・・・その下準備にかかろうとしていた時代。
自分の隠れたセックスアピールを、既にこの少年が見抜いており、そっと耳打ちされるということは
裸を見られてしまうのと同じくらい恥ずかしいことだった。
いや、まだ裸を見られてしまう方がマシだとすら感じた。
心を見透かされてしまうのは、自分が何かしらの「偽り」を持っている時こそ、
仮面とのギャップに相手が落胆しやしないかと、ヒヤヒヤする。
標準的な体型だった・・・・いや、外面的には平均よりも早熟に見られていたあたくしが、
制服の下に隠し持っている肉体は、恐らく、周囲の人間の予想を裏切らない範囲だと
この時既に自覚があったのかもしれない。
自分では制御できない成長とかけ離れたところにある、もうひとつの「伸び」を
未成熟なあたくしは必死に隠そうとしていたのだった。


大人になる・・・・というか、ある程度の熟成時間を終えた身で考えてみると、
実にちっぽけで、バカバカしい「怯え」だとは思う。
自分を正当化してしまえるだけの「糧」もなく、何もかもが初めて感じる感覚。
今はこうして成文化できるけれども、
恐らく当時は、どんな語彙で以って今の自分の気持ちを表現したらいいのか、混乱していたと思う。
2人の少年に対して抱えた、明らかに違う感情。
どちらをも「好き」という一言で片付けるには、ちょっと違う・・・・それには気付いていたけれど。
多分、強引でマイペースなヨシオのような少年に「異性」をまるごと重ね、
「畏怖」というものに身を委ねることに対する快楽や魅惑のことを「好意」と勘違いしていたのかも。
そういうのが、本当の「好意」に転じる可能性を孕んでいることは、後々気付くのだけど、
この時はまだ、「可能性」の部分に少し触れかかっていた程度だったから、尚更かもしれない。
実に微妙。今思っても、相当危うい。


3回目のニアミスは、そう遠くなく、すぐに訪れた。
「畏怖」を受け容れるかどうかで迷っていたあたくしに、彼は堂々と立ち塞がり、
あたくしは、本来愛している人に対してではなく、この「畏怖」の対象に口づけをした。
自分のキャパシティではもうどうすることもできないと、自分でもわかっていたはずなのに、
あたくしと彼は、位置的に最短距離になった。
これよりももっと近い場所がある・・・・それにも気付いていたが、自分の肉体がまだ発展途上だということも
ちゃんとわかっていたので、精神がそれを追い越すことはなかった(苦笑)。
ほんの数ミリの隙間を、彼は見逃さなかった。
そしてあたくしもその隙間を作っていたことを、認めざるを得なかった。

↑以後、このテの人種には挑戦的なアサミンジャー(爆)

優しく抱きしめてくれたけれど、彼は何も言わないのだった。
この時、初めて「トラップだった!」と気付かされるのである。そこらじゅう、トラップだらけなのは
一目瞭然、誰が見ても明らかだというのに、踏み込んだ自分をバカだと思った。
彼はあたくしがこの2ヶ月前に、シンに言った言葉を撤回し、
同じ言葉を要求している。そのことはこの少し前に本人から何度も何度も聞かされていたのである。
聞かない振りをしていた自分・・・・そして隙間が生まれた。


「別れろよ。」

「何でアンタにそんなこと言われないかんのよ?」

「いいじゃん・・・・別れちゃえよ。」

「やだよ・・・・。別れたら私、またひとりやん・・・・。」



言葉の最後の方は、誰にも聞こえないように言ったつもりの、この時の本音だった。
ヨシオにも聞かせる義理のない、弱音だった。
ひとりが寂しいと、決して表面上では口に出さないのだけれど、そして、孤独がいいとさえ吐くのだけれど
本当は誰よりも、「ひとり」が嫌で、「ひとり」が寂しくて、「ひとり」をやめたい、
心の膿でもあったのだ。
シンがいてくれる・・・・膿を吐き出し、最初に求めたのは物理的なつながりだった。
ヨシオはあたくしの言葉を受けてか、それともいつものマイペースなのかわからないようなトーンで、
こう言って、あたくしを本格的に絶句させたのであった。


「別れたら、俺が拾ったるのによ・・・・。」


あたくしは自分でも、プライドが高くて鼻持ちならないヤツだよなぁ・・・・とオノレを呪っていたけれど、
自分の更に上をいくヤツを発見して、呆気に取られて、それで言葉を失った(笑)。
あたしゃ、捨て猫ですかっっ!!??
それとも空き缶かなんかですかっっ!!??
うぅぅ・・・・冗談じゃない・・・・。いくら気持ちと裏腹でも、絶対にコイツのことを「好き」だなんて言わない!
頼まれたって・・・・そうよ、土下座されたって、絶対に言ってやるもんかっっ!!( ̄^ ̄)

自分でも思い出した(爆)。
どうして何の記録にも、ヨシオのことを本当はどう思っていたのか、
そういうことに関し、素直に書かなかったのかを。
こういうことを心の中で絶叫した手前、自分の体から外に気持ちを吐露することを
完全に封印しなければならなかったのだ。・・・・プライドが高いが故の、徹底防壁。

この日記にも、確か彼に対するホントの素直な思いみたいなのは、書いたことがあるけれど、
この部分が思いっきり欠落していた。
今日、書くまですっかり忘れていた・・・・マジで( ̄∇ ̄;)
この言葉を聞いたということを、完全に覚えていられた頃まで、あたくしは封印を続けた。
忘れることができたから、封印を解きにかかった。
が。
思い出してみると、彼もあたくしに負けず劣らず傲慢な少年であったということが、コレでハッキリした。
そんな彼を庇うようにして、最後の最後まで、誰にも真相を言わなかった自分が恥ずかしかったから、
封印したということも、同時に思い出した(苦笑)。

↑記憶力には自信があったのだが・・・・(苦笑)

多分次回がラスト・・・・まとめに続く。

あさみ


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