ケイケイの映画日記
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2025年09月02日(火) 「8番出口」




ゲームが原作だとは、全く知りませんでした。観たい作品がどんどん少なくなっていく中、これは絶対観ようと思った作品。うん、「世にも奇妙な物語」でした。でも95分の映画なので、ドラマより内容が濃い。自分で如何様にも思考が広がって、私は好きな作品です。監督は川村元気。

派遣先への出勤途中、元カノ(小松菜奈)からの電話に出た男(二宮和也)。電話をしながら地下鉄の構内で出口を探すも、迷ってしまいます。どんなに探しても、出口が見つからない。やがて彼は、8番出口から外に出よ、という看板を見つけます。

元カノは、別れた後に妊娠が解った事を男に告げます。「あなたが決めて」と言う元カノに、「決められない」と答える男。そこからループの如く、同じ構内を彷徨い歩きます。

男は自信無げで、線が細い。喘息の薬も持ち歩いています。そして仕事は派遣。思い出の元カノは、真っ白のワンピースが似合う、清楚な美しい人です。釣り合わない元カノに対して、常に控えめだったんでしょう。それが優柔不断に繋がって、女性の方から別れを告げられた、と想像しました。しかし、「地下鉄で迷った」と言う男に、「方向音痴なんだから」と、微笑んでいるような声の元カノは、決して男が嫌になって別れたのでは、ないのでしょう。

異物を発見すると、ポイント1で、出口が0から一つずつ増えます。間違い探しの世界観です。例え5になっても、次に間違えると0に。正しくゲームの世界だな。積み重ねた物が、一瞬で無くなり、自棄なったり絶望するのは、現実でもある話です。その後、男はどうするか?諦めが悪いのは、いけない事ではないんだと、感じます。

ループする度、出会う不気味な歩く男(河内大地)。「あれはもう、人間じゃない」と男が言う通り、めちゃんこ気色悪い。しかし、歩く男が「人間」であった様子も描かれます。キーパーソンは、途中で出てくる男の子(浅沼成)。迷う男も、歩く男も、似たような経験があるのでしょう。二人の運命を分かつのは、その経験をどう生かすのか、では?。また利己的になるのか、それとも共生する事を渇望するのか?神様は別々の形で試したのかも?

そう思うと、やはり途中で出てくる女子高生(花瀬琴音)は、援交していた事を、反省しなかったんだな。だから人間ならざる存在となる。誰だって間違いはあるんだよ。でもまた同じ事が起ったら?その経験を無駄にせず、自分で自分を導くべきなんだと思います。

ラストに涙を浮かべ、決意したように、右の方向へ顔を向ける男。迷う前のひ弱さは、ありませんでした。ループは彼にとって、決して無駄ではなかったんです。

ニノはやっぱり、お芝居上手だな。途中までうだつが上がらない、冴えない男性だったのが、途中から腹を決めて、このループに立ち向かっていく過程で、段々と精悍になっていく。同じ衣装、狭い空間、短いスパンで、段々と変化していく様子を、自然体で演じていました。

私が観た回も超満員でしたが、大ヒットしているみたいです。自分なりに、色々読み解く楽しみのある内容なのが、ヒットの一因だと思いました。



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