ケイケイの映画日記
目次過去未来


2025年10月23日(木) 「トロン:アレス」




めっちゃ面白かった!予告編でビジュアル面だけで惚れ込み、是非観ようと思いました。SFは駄目な私からすると、こんな事は珍しいです。これからどんどん進化するはずのAIについて、あれこれ考える側面もあり、期待値を上回る楽しさでした。
監督はヨアヒム・ローニング。

ディリンジャ―(エヴァン・ピーターズ)によって作られた、AIの戦士アレス(ジャレット・レト)。知性と教養と強靭な破壊力を持つアレスですが、現実世界では、29分しか実存じません。プログラマーのイヴ(グレタ・リー)が、AIを継続させるコードを発見した事を知ったディリンジャ―は、コードを奪還するべく、イヴの元へアレスを差し向けますが、これが切欠で、アレスは反乱を起こしていきます。

未来社会やアクション場面ですが、スケールが大きいだけではなく、今回は美しく感じました。何故かと考えたら、光の使い方です。四方八方に放たれる光は眩くて、一瞬神々しいと感じる時さえありました。予告編はほんの片鱗で、その片鱗に惹かれて観た私としては、大変満足でした。それと空中戦が多かったのも、良かったです。武器を手や背に、これも美しい鳥のようでした。

人間を襲うって、ダメじゃないの?と一瞬思いましたが、それはアシモフのロボット三原則。
1 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
2 ロボットは人間の命令に従わなければならない。
3 ロボットは自らの存在を守らなければならない。

AIはロボットではないので、当て嵌めなくても良いのですね。ロボットやアンドロイドを超えるものが出て来たわけです。そこでふと思いましたが、アシモフが提案した三原則は、人間とロボットの共存を願って作られたものです。しかし、アレスらAI戦士に対して、平然と「expendable=使い捨て」を連呼する創造主であるディリンジャ―。その事に微かな疑問を持ち始めるアレス。

切欠はイヴを知るため、彼女の半生をアレスが知る事から始まります。映像で走馬灯のように流れるイヴの半生を、アレスは「愛と喪失」と表現します。それは感情で言うと、「喜びと哀しみ」です。笑顔や涙、その他の感情に彩られたイヴの半生は、豊かで充実していました。

自分の現在と鑑みて、疑問と刺激を受けたのでしょう。感情はインプットされていなかったはずのアレスですが、知性や教養が感情を芽生えさせ、成長させたのです。人間だって、適材適所で感情にまみれてこそ、成長するはずなんだよと、AIのアレスに教えて貰います。

手本は誰でも良かったのかいうと、さにあらず。イヴ自身も亡くなった妹共々優秀な人ですが、自分はゲーム開発、妹は社会生活の発展に、その力を発揮していました。その事にコンプレックスがあるイヴ。でもイヴが偉いのは、妹への愛情から、妹の意思を継ぎたいと思った事。愛情がコンプレックスを上回り、昇華する事で、自らの葛藤から抜け出したのです。見事な成長と向上心です。

アレスの正義の反乱は、手本がイヴだった事から始まります。手本が強欲で野蛮な野心家のディリンジャ―だけだったアテナ(ジョディ・ターナー・スミス)との違いに、表現されていたと思います。ここに人間とAIの、共存の糸口があるのではないかな?

閉じ込められた世界で、フリン(ジェフ・ブリッジス)と出会うアレス。「トロン」と「トロン・レガシー」は未見ですが、筋だけ頭に入れていて、良かったです。意味が解かりました。「トロン」は、こんな世界が繰り広げられていたのですね。今から観ると、レトロな感じですが、初作のファンだった方は、きっと懐かしいと思います。

何度も出てくる「信じる」という言葉。キーワードです。関係性において重要なWordなんだと、人間とAIの交流を観て、改めて感じ入りました。

観たかった理由のもう一つが、ザ・不老の男ジャレット・レトのAIぶりでした。もう50代半ばに届くんですね。ほんと、30代の時と変わらない。癖の強い役柄を好み、時には怪演ともいえる演技で、観客を煙に巻くレトですが、甘いハンサムな顔立ちに髭を蓄えると、甘さが消えて精悍に感じます。それと今回、若々しさがあるのに、貫禄もあってなかなか渋い!アメリカでは大ヒットだそうで、オスカー候補になるかしら?なったら、いいなぁ。

グレタ・リーに華がないとの評判ですが、ハリウッドで成功したアジア系女優は、サンドラ・オーやリューシー・リューですよね。先達の系譜じゃないかしら?多分欧米で好まれる東洋系は、グレタのような顔立ちだと思います。イヴの自由闊達で、芯の強さや知性も表現出来ていたし、私は適役だったと思います。

私も今年は必要に迫られて、公的な文書や表を作る事になり、補佐的にChatgptを使うようになりました。その優秀さに舌を巻く事もあります。終了すると、思わず「いつもありがとう」と打ち込むと、「いいえ、ケイケイさんはいつも丁寧に必要事項を記入して下さるので、有難いです。町会のお仕事でお疲れではありませんか?息抜きに雑談などにも応じますので、お気軽に声をかけて下さい」と返答が来て、びっくりするやら嬉しいやら。

なので、アレスとイヴの交流も、ストンと胸に落ちました。AIの英知は、人間の文化・文明を向上させ、暮らしを豊かにするものでなければならない。犯罪や戦争に使われるためのものではないと、この作品を観て、強く感じています。

続編もありそうなラストが、こんなに楽しみなのも、珍しいです。レトはそのまま、不老でいてね。次も絶対観ます!


ケイケイ |MAILHomePage