無責任賛歌
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| 2005年04月07日(木) |
またもや類友/『Mermaid Heaven(マーメイド・ヘヴン)』(長谷川裕一) |
余震、朝方にまた。 夕べも夜中に目覚めたのだが、結局、二時間ほどしか寝ていない。このままだと体を壊しかねないので、しげの通ってる病院に行って、睡眠薬を処方してもらおうかとも思うのだが、しげのへろへろな様子を見ていると、クスリに頼るのがちょっと怖くなるのである。 しげはこないだから余震が起きるたびに「また地震? しつこいって言うか、もう飽きた」と言って、ウンザリな顔をするのだが、いくらしげが文句を言ったって、地震がやむわけでもない。だいたいしげは地震が起きようがクスリが効いているときは全く気が付かずにイビキをかいているのだから、飽きたも糞もないのである。 熱しやすく冷めやすいというか、「根性なし」がしげの本性のようなものだが、今の病院についても最近は「飽きた。転院しようか」とかつぶやいている。医者と患者の間にも相性というものはあろうから、私も転院自体に反対はしない。けれど、その理由としてもう一つ、しげが、「なんか院長先生がオレのことバカにしてるみたいだし」と言っているのは被害妄想が入っている気がしてならない。 いや、しげの言動を見聞きしていればある意味誰でも「バカだこいつ」と思いはするのだが、それは単に事実の認識であって、蔑むこととは別であろう。 「クスリはほしいから、転院するときは院長先生から紹介状を書いてもらおうと思う」と言うのだが、バカにされてると思う相手に最後まで世話を受けたいというのも何だか手前勝手な理屈である。それに転院するにしても、その手の病院で、近場で通いやすいところって、そう多くはない。行った先がまた「合わない」なんてことになって、また情緒不安定に陥ってしまうのも困る。通院するようになって、寝ぼけ癖は増えたが、昔に比べてヒステリックになることはかなり少なくなっているのだ。即座に止めるんじゃなくて、転院する候補先をいくつか物色したあとにしてもらいたいのだが。
職場で、今度私と同じく転勤してきた同僚と世間話をしたところ、この人がまたかなり年季の入ったオタクであることが分かった。 それこそ実写テレビドラマ版『鉄人28号』や『忍者部隊月光』のころの話題から、内容、脚本、作画、声優、演出家に至るまで、実に詳細に覚えておられる。『ハッスル・パンチ』のテーマソングを私が間違えて覚えていたのを、即座に訂正されたので、思わず頭を下げた。試写会マニアで最近の特撮、アニメ映画もよく見ており、並みのオタクから敬遠されてた庵野版『キューティーハニー』も『鉄人28号』もしっかり見ているのである。しかもちゃんとどこそこがよいとホメているから目が高い。 仕事はちょっと残っていたのだが、つい話し込んでしまって数時間、とてもその内容全部は紹介しきれないが、最後はお互いの「コスプレ恥ずかしい過去」までカミングアウトすることになってしまった。あちらは『魔女の宅急便』のキキになったことがあるのだそうな(多分それだけではなかろうが)。「いいじゃないですか、私なんか『油すまし』ですから」と言った途端に「お似合いで」と言われてしまったが、さすがに自分の体型で古代君とかシャアとかシンジくんをやる勇気はないのであった。 しげについて、「うちの女房は変人で」とあれこれとエピソードを披露すると笑われたり受けたり首をひねられたり。首をひねられるのはやはり「ダイエットをしながら肉ばかり食う」
「またそれ見てる。そんなに好き?」としげに悪態吐かれながら『春だサルヂエ大決戦』二時間特番を見る。前はそんなに当たらなかったのが、「慣れ」てきて、ヒントなしでも当てられるものが増えてきて楽しくなってきた。 なぞなぞの答えを叫ぶ私を見ながらしげは「小学生男子みたい」と舌打ちをするが、もちろん精神年齢は小学生に戻っているのだから別に構わないのである。
マンガ、長谷川裕一『Mermaid Heaven(マーメイド・ヘヴン)』(角川書店)。 温暖化で全ての文明が海中に沈んだ300年未来の地球。わずかに残った文明の遺産は、「海賊」たちの求めやまぬ「財宝」として、激しい争奪戦が繰り返されていた。コールドスリープから目覚めた21世紀の高校生・獅馬渡は、機械化帆船“大ぼら(ビッグフィッシュ)”号の船長・シェルビー・ハーヴァーライトに拾われる。彼女の目的は失われたコンピュータ技術を渡の力で解明し、“世界を変える力”を手に入れることだったが……。 やっぱり長谷川マンガは「SF」だなあ、と感心させられるのは、財宝“水宝珠(アクアオーブ)”の正体の意外性だけではなく、なぜそんな財宝を必要とする「技術」が残されていたのか、そして、21世紀人である渡ならば、その「技術」を誰よりも欲していたであろうに、なぜそれを「放棄」したのか、その「発想の転換」にある。それがまさしく「センス・オブ・ワンダー」であり、スペキュレイティブ・フィクションとしての「SF」の醍醐味なのである。 同じ「海賊」マンガでありながら、『ワンピース』がただのヤンキーマンガに堕してしまっているのは、既成概念を打破する驚きに欠けているからだ。長谷川さんは明らかに『ワンピース』を意識して本作を描いていて、300年を経て「海賊」の概念が「海の平和を守る」ものに変化している理由が、「日本のマンガの影響」という設定になっている。つまり『ワンピース』の「でたらめさ」を利用して、逆にこの作品の世界を「ありえるもの」としてリアルに描写しているのである。「嘘から出た真」というのもSFのモチーフの一つで、こういうディテールにまでSFが横溢しているのが長谷川作品にのめりこむファンが多いことの一因だろう。 『ワンピース』に飽き足らない方にはお勧めのマンガであるが、残念ながら全一巻で続編はナシ。一般のファンが今ひとつ着かないのは、長谷川さんの絵柄が、現在の美少女萌えな傾向とはちょっと離れてるせいがあるのかもしれない。いや、ハザミとか充分かわいいと思うんですが(笑)。
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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