無責任賛歌
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
2005年10月03日(月) |
フォーチュン弁当/舞台中継『イッセー尾形 夏目漱石を読む!書く!創る!』 |
朝と言うか、深夜、NHKBS2の『深夜劇場へようこそ』枠で、演出家・森田雄三さんのインタビューに引き続き、スイスの演劇学校で行われたワークショップを基にした舞台『イッセー尾形 夏目漱石を読む!書く!創る!』を見る。 森田さんが鈴木裕美さんや林あまりさんの質問に答えてこれまでの経歴を語られるのだが、「串田和美の演出に反発してね」とか、イッセー尾形さん以外のキャストと組んで作った『マクベス』(山崎努主演版)について、「発声練習しているの見てると『アナウンサーになりたいの?』って言いたくなるんだよね」とか、サラッと仰るので、「そんなに正直なことを喋ってもいいのかなあ」と、見ているこっちがドキドキしてくる。 なんだか怖いものなしと言うか、「七十而従心所欲、不踰矩(しちじゅうにして、こころのほっするところにしたがへども、のりをこえず)」って印象。もっとも森田さんはまだ七十歳にはまだ間があるけれど。 まあこんな凄い方を目の前にして、抜け抜けと演技とも何ともつかぬ小芝居を偉そうに披露していたのだから、今更ながら自分の臆面のなさには恐れ入る。馬鹿はこれだから怖いよねえ。 ワークショップのことにもちょっとだけ触れられていて、「小学生が来るんだよ」って笑って仰っていたのが笑えた。だって「年齢、職業、舞台の経験、未経験問わず」って謳ってるんだもん、小学生だって来るさあ(笑)。
引き続いて、実際の舞台を見たのだが、始まった途端に、テレビの前で凍りついてしまった。何とも困ったことに、森田さんの演出を台無しにしてしまうような放映形態を取っていたのである。 スイスのワークショップであるから、当然出演者の大半は外人さんである。インタビューでも森田さんが仰っていたが、「何を喋ってるのか、サッパリ分からないんだよね。だからイッセーさんと『あれはこういうことを喋ってるんだろう』と想像するんだけれど、あとで本当に何を喋ってたのか聞いてみるとこれが全然つまらないんだ。こちらが勝手に想像してることの方が面白いのね」ってな具合で、何を喋っているのか分からない面白さというものを演出しているのである。 ところがNHKの大馬鹿野郎は、見事にその演出をぶち壊してくれた。つまり、外人さんの喋りに、全部「字幕」を付けてくれたのである。漱石(を模してるんだが、スイスまで漱石は洋行しちゃいないので、実は誰だって構わない)との間のディスコミュニケーション、これが台詞が分かっちゃうとただの「説明」としてしか機能しなくなる。果たして会話が成り立っているのかいないのかすら分からないスラップスティックな味わいが、全て消し飛んでしまっているのだ。 舞台は、テレビ映像に移された途端にその魅力が半減してしまうものだが、このNHKの「親切」はそれをさらに助長することになってしまっている。この『深夜劇場にようこそ』は、シアターチャンネルに入っていない演劇ファンにとっては、唯一のオアシスのような時間枠だというのに、こんな粗雑なことをされちゃあ本気で困るのである。 しようがないので、あえて字幕を見ずに中継を見て行ったのだが、そうした途端に外人さんたちのセリフは殆どハナモゲラ語と化し、まるでバカボンパパの家にバカ田大学生の後輩たちが大挙して押し寄せたかのごとく、何が起こるか分からないナンセンスの極みとでも言うべき珍妙な舞台が展開して行ったのである。 多分、実際の舞台では、字幕は全く流れなかったのではないかと思う。そうでなければ、あの舞台は成り立たない。やっぱり舞台はナマを見に行かなきゃしょうがないよなあとつくづく感じたことである。ビンボーでなかなか舞台を見に行けない、テレビで我慢するしかないと仰る方は、舞台中継を見る時は、その面白さを想像力で三倍増しして見るようにしましょうね。これは別に私だけが言ってることじゃあなくて、常識と言っていいことなんだけれども、舞台の批評は、決してテレビ中継を見て行っちゃいけないのである。
家事をサボリまくるしげが、何とか毎日用意してくれているのが昼の弁当である。 と言っても、おかずは全部、弁当用の冷食を電子レンジでチンしたものばかりなので、料理の手間なんてものはかかってない。それだって別に文句を付けようとは思わないのだけれど、中に一つ、「占いグラタン」があって、食べると底から今日の占いが出てくるというもの。で、今日のそれが何だったかというと……。 「はやねはやおきをしましょう」 そりゃあ、お前のことだああああ! 私の睡眠が充分取れないのも、しげの情緒不安定が原因の大半なんだけどな。
テレビ『Mr.マリックvs芸能界大スター軍団 全面対決トリック見破りバトル 超魔術完全包囲網スペシャル』を見る。 前にも何度かマリック対芸能人の対決ものがあったらしいが、まともに見たのはこれが初めて。騙しのトリックを明かすのが見所のようだけれども、実際は「こんな簡単なトリックにも芸能人は馬鹿だから引っかかっちゃうんですよ」ってのが製作スタッフのウラ意識としてありそうで、余り見ていて楽しいものではない。 奇術のトリックというものが案外単純で、人間心理の陥穽につけこむことで成立していることは周知の事実であるが、だからちょっとでも手品を齧ったことのある者なら、「慣れ」でそのトリックを見破ることは簡単である。だからこういう番組に呼ばれる芸能人ゲストは、「慣れていない」人に限られる。「番組ゲスト」のように見せかけてはいるが、例えば『涙そうそう』からのゲストが泉ピン子といしだあゆみと来れば、こりゃ、「騙してくれ」と言うようなものである。確かに泉ピン子が騙されて「畜生!」と叫んだり、橋下徹が呆然としたりするあたりは、見ていて溜飲が下がりはするのだが、一般的にはゲストが騙される様子は体よく人身御供に出されたような感じで、なんだかかわいそうである。 間違ってもナポレオンズが対決相手に呼ばれることはないが、せめて騙されて悔しがる人より、騙されて感心する人をゲストに呼んでほしいと見ながら思ったことである。 ……しかしどうして泉ピン子って、全然好きになれないのかなあ。
マンガ、山田南平『まなびや三人吉三』2巻(白泉社)。 表紙が「お嬢吉三」になったばかりのやぁや。普段のやぁやはちんまいだけの栗娘だが、コスプレした途端に「あんなふう」になるのである。いや、充分にキモです♪ 学園探偵ものは数あれど、学園怪盗ものはそんなに多くはないし、傑作もあまりない。だもんで、これも1巻はたいして期待せずに買ったのだったが、謎の怪盗・三人吉三のうち、和尚吉三の正体には思わず膝を打った。怪盗もののキモが、その盗みのテクニック、機知にあるのは当然だが、それ以外にもストーリー上の「企み」があっちこっちに仕掛けられていたのがミステリファンとしては嬉しかったのである。怪盗が「謎」の存在である以上、その「謎」を暴く者と暴かれまいとする者との虚々実々の争いがあってこそ、盗みの醍醐味はより引き立つ。そのへん、この作者、結構「分かって」るんじゃなかろうか。言っちゃなんだが、『ルパン三世』も『キャッツ・アイ』も、後半になるに従って、そのへんの機微がなくなっていっちゃって、どんどんつまんなくなっていったからね。本作はまだ2巻目だからまだまだ大丈夫。 やぁやと慎太も、めでたく三代目「お嬢吉三」「お坊吉三」を襲名することになったわけだが、早速、今巻からライバルの「弁天小僧菊之助」と「南郷力丸」が登場。こいつらの正体は「和尚吉三」の時ほどのインパクトはないが、それでも「弁天小僧」のもともとの役どころを考えると、こいつにはまだまだ秘密がありそうで今後の活躍が楽しみである。そもそも「彼」が「お嬢吉三」になるはずだったと言うのは、どういうことなのかね? と言うか、「あと三人」は出てくるのかな?
マンガ、西森博之『道士郎でござる』6巻(小学館)。 なんだかウヤムヤのうちに番長対決編は終わったみたいだ。神野は転校しちゃうし、A組は有名無実だったし、ラスボスに辿りつく前にゲームオーバーしてしまったような隔靴掻痒感はあるけれど。 で、これで話が終わりかというとまだ続くみたいなんで、一応人気が出たってことなんだろう。このへんでうまいことオチをつけとけばいいような気もしないでもないが、何となくなし崩し的に「水戸黄門編」に突入したような展開である。つまり、道士郎が町内の「世直し」を始めるのだな。でも、このマンガではもう道士郎は「最強」だから、登場させれば話の決着はあっという間に付いてしまう。仕方がないので、道士郎の出番を減らして、一応主人公の健助を活躍させはするのだが、展開的にもうかなり無理が生じてきている。要するに場つなぎ話を作って誤魔化しちゃいるが、この先どういう展開に持ってったらいいか、作者が右往左往してるってことだ。 まあ、作者の根がヤンキーだから、マジメな主人公を描いても、サムライを描いても、どこかヤンキー臭さが抜けてなくて無理が生じてるんで、大破綻を起こす前に、10巻あたりを目途にしてうまいことまとめて終わりにした方が、次の連載へのステップとしてはちょうどいいと思うんだけどな。基本的に、吉田聡のマネから大きく逸脱してオリジナルを描ける人ではないから、『今日から俺は!』の路線に戻った方がよかないかなと思うのだが。
2004年10月03日(日) 読み飛ばしていい日記その1 2003年10月03日(金) 追加日記2/『二十面相の娘』1巻(小原愼司)ほか 2002年10月03日(木) 何が最悪?/アニメ『NARUTO ナルト』第1話/『愛人(あいするひと)』2巻(吉原由起)/『番外社員』(藤子不二雄A) 2001年10月03日(水) 新番2弾!/『X』第1話/『女刑事音道貴子 花散る頃の殺人』(乃南アサ)ほか 2000年10月03日(火) 博多はよか、よかァ/映画『博多ムービー ちんちろまい』ほか
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
☆劇団メンバー日記リンク☆
藤原敬之(ふじわら・けいし)
|