昨日・今日・明日
壱カ月|昨日|明日
風の冷たい日曜日。太陽は雲間を出たり入ったり。日が照っても少しの間だけで、すぐ翳ってしまう。昼間、映画館のロビーの窓からポタポタと落ちていく雪を見た。三月の雪。このまま春にならなれけばいいのに、と思う。
朝ご飯を食べて家でノンビリした後、中之島公会堂に高橋悠治のバッハを聴きに行くか、映画にするか迷って、結局映画を観に行くことにした。地下鉄を乗りついで梅田まで行く。車内では山田稔「酒はいかに飲まれたか」と北沢恒彦「酒はなめるように飲め」を再読する。黒川創が北沢恒彦の長男だと知って、また読んでみたくなった。
午後1時から、シネ・リーブルで「天井桟敷の人々」を観る。1945年に撮られたマルセル・カルネによるフランス映画の名作。何の根拠もなく、どことなく鬱陶しい映画のような気がしてて、今まで観たことがなかった。こんなにいいもんだと思わなかった。スクリーンで観られる機会を逃さず、本当によかった。 天才パントマイム役者、女とシェイクスピアが大好きな俳優、犯罪を繰り返す紳士、上流階級の伯爵、この4人がひとりの美女ガランスをめぐって交錯する。みなそれぞれ真摯にガランスを愛そうとするが、勇気が足りず、タイミングを逃し、プライドに邪魔され、やり方を間違え、結局誰も彼女の愛を得られない。本当に欲しいものだけが、いつも手に入らない。ラストは哀しいが、人生とはまあそうしたもんかもしれない。どこにも行けず、戻るところもない。ままならないことを実感していく作業のくり返し。 プレヴェールの書くセリフが良い。どれひとつとっても外してない。 『フレデリック「…、何を考えているんだい?」 ガランス「とりとめもなく、いろいろと…。世の中には、黙って愛しあう恋人同士や、普通の言葉で恋を語りあえる人々は多いわ。そんな人たちって、素敵!」 フレデリック「僕と一緒でしあわせじゃないんだな、ガランス?」 ガランス「あんただって、わたしと一緒でしあわせじゃないんでしょ、フレデリック?」 フレデリック「僕は…」 ガランス「あんたがもし本当にしあわせだったら、そんなにのべつ冗談ばかり言う必要があって?わたしがもし本当にしあわせだと思ってるんだったら、そんなふうにわたしを笑わせようとしたり、慰めようとしたりする必要があって?幸福でも不幸でもない、わたしたちはどっちつかずなのよ。それだけのこと……」』
脇役の描き方も素晴らしい。大衆演劇を愛する無言劇のフュナンビュル座の座長、盲目のふりをした乞食、狡猾な古着屋、気の弱い悪党…、主役達とがっちりかみ合って映画にふくらみがでている。それからパントマイム役者バチストを演じるジャン=ルイ・バローの、演技と眼光のキレの鋭さ。完璧でした。名作は古びないんだなあ。
晩ご飯を食べて、バスで帰宅。バスは混んでいて席を確保できず、足が疲れた。夜は日曜日恒例の北中正和の「ワールドミュージックタイム」を聴いて、くつろぐ。今週はろくに掃除が出来なかった。心のどこかで罪の意識あり。 ・購入物:なし
・朝食:おからの煮物、梅干、玉ねぎの味噌汁、海苔佃煮、ごはん 昼食:映画の合間に。くるみパン、珈琲 夕食:梅田食堂街にて。店名忘れた。コロッケカレーライス、サラダ
|