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青い瞳 - 2001年04月10日(火) 細かいパーツに分解して、その部品を、いろんな所に撒いちゃった。 もしもロボットだとしたら、そんな感じなのかもしれない。 近鉄線、京阪電車、叡山電車、大阪環状線、阪急電車、東海道新幹線。 師団街道、四条通、川端通、塩小路、堀河通、竹田街道、東名高速。 ここ数年に移動した鉄道や道路に、点々と、私のかけらが落ちているんじゃないだろうか。 道路脇の草むらや、線路端の敷石の隙間で、破片に埋まったダイオードが、思い出したように発光したり、ちぎれたケーブルの先が、ジジジ・・とショートしたりしているんじゃないだろうか。 とにかく、すっかりバラバラだ。 ・・・・・・・ ぼんやりと眺めていたTVで、メル・ギブソンを見たら、いきなり京阪電車にワープした。 土手になびくススキの穂、競馬場のシルエット、昇ったばかりの巨大な満月、そして、メル・ギブソンみたいな青い瞳。 その日、同行した講師が、青い瞳のイギリス人だったのだ。 当時、私は京都に住んでいて、英会話スクールの仕事をしていた。 本業は絵描きさんだというその講師と、淀の教室の仕事を終えた帰り道、安いスーパーに寄って買い物をした。 彼がいっぱい梨を買っていたから、きっと秋のはじめのことだったのだろう。 余所者だという点において、異邦人の講師たちと、関東人の私の立場が似ていたからかもしれない。 物腰は柔らかいのだが、つかみどころのない京都人と話すより、たどたどしい英語で彼らと話す方が、なんとなく気安い感じがしたものだ。 京阪電車の緑色のシートに座り、半分開けた窓から吹き込む風に吹かれながら、食べ物の話や京都の家賃のこと、かなり短くなった私の髪型のことなんかを話していた。 そして、私が降りる駅のホームが見えてきたとき、青い瞳の彼が尋ねた。 「いつまで京都にいるの?」 「わからない」 と、私は答えて電車を降りた。 See you ! たぶんその頃だ。 自分のダメージが、かなり深刻な状況にあることに、薄々気がついていながら、何食わぬ顔をして働きつづけようとしていたのは。 もし、もう少し傷が浅かったら、今頃、メル・ギブソンみたいな青い瞳のボーイフレンドと、鴨川べりを散策していたかもしれない。 まったく、惜しいことをしたものである。 ・・・・・・・ 多少の無理はしかたない。 でも、無茶はするもんじゃない。 あ、あと、法螺話も、ほどほどにした方が身のためだろうな。 ...
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