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SS「薫楓」 -2・・・・・tako - 2003年05月06日(火)
「なあ、どこ行くのか、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?」 米原JCTから北陸道に入る手前で、そう訊ねるサンジに、 「こっち」と言って車線変更。 言葉のわりに、声の感じはさほど不満そうでもない。 楽しみにしてたもんな、お前。 金の髪をくしゃっと混ぜ、「もうすぐだ」と告げる。
琵琶湖の近く、戦国時代に悲劇の舞台となったその古城址は、 小高い山の上にある。 尾根の高低差を生かして作った曲輪や野面積みの石垣が残っているだけで、 訊ねてくるのは古城マニアぐらいの、静かな場所。
本丸に続く石段を、かつてここを徒歩で、または馬で登城した武士を思いながら 歩いていくと、突然目の前に開けるだだっ広い空間、 「大広間」とよばれる、この城最大の面積をもつ郭跡に出る。
千畳敷とも言われるこの郭跡には数え切れない楓の木が乱立している。 深い緑、明るい緑、日ざしを浴び、重なり合って影になり、 漣のように押し寄せる碧のうねり。 足元の草叢とは違う碧の洪水が、ちっぽけな人間を飲み込むように迫って来る。 俺なんかよりは遥かにロマンチストなサンジは、 予想もしていなかった風景に息を呑んで立ち尽くしている。
来る途中、戦乱の時代に引き裂かれた、城主と奥方の悲恋を話してきた。 サンジなりに感ずるところもあるのだろう。 ポツリと零した言葉は、
「落城の時、ここのもみじは赤かったのかな?それとも今みたいに…」
to be continued.....
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