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ミレーの名画「落ち穂拾い」 夕暮れの農園で、3人の農婦が落ち穂を拾う姿を描いた有名な絵画。 のどかで、いい絵だなぁと感じていた。 しかし、そこに描かれていたのは、そんなことではなかった。
当時のフランスは一九世紀で戦乱の絶えない激動の時代。 フランス革命の後も七月革命、二月革命で、王政打倒まで国内は戦火で乱れ、その後も普仏戦争まで勃発した。 そしていつの世でも、戦乱などで社会が疲弊すると困窮するのは庶民、つまり弱い人々。 実は、「落ち穂拾い」に描かれている3人の女性は、夫を亡くした未亡人たち。 働き手を失った婦人たちは夕方近隣の農園で、農家の収穫後わずかに残された落ち穂を、生きるため必死に拾い集めた。 それが、あの絵の構図だという。 そして当時フランスの農村には、すべてを収穫せず、落ち穂を畑に残しておく習慣があった。 少しでも誰かの助けになればという、ささやかだけど温かい思いやりの上で。
そう、「落ち穂拾い」は、弱者をさいなむ当時の生活の厳しさ、それに負けずに必死に働く姿の気高さ、そして疲弊した世情でも失われない農村の優しさを、1枚の絵に凝縮したものなのです。 だからこそ、あの絵は心にしみる傑作と評価されているのでしょう。
さて、農家が落ち穂を残したような思いやりのことをホスピタリティと言います。 ホスピタル(病院)、ホテルの語源です。 自分の取り分を減らしてまで、さりげなく自然体で他人を思いやる心という意味です。
なかなか実践は難しいことです。 が、そう思ってしまうのはなぜでしょうか。 おそらく、難しいのではなく、難しく考えているからだと思います。 同じ時代に生きたのだから、特定の誰というのではなく、広く思いやりの気持ちを持てたらもっと実り多いでしょうね、自分自身。
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