transistasis
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フランスとイギリスが共同開発したSST旅客機コンコルドが墜落した報道は、皇太子世代男子にとって絶望を更に確定的にする出来事だった。 1960年代後半に開発された科学技術の結晶たる超音速旅客機の存在が「事故報道」でしか世に伝わらない絶望感。 「未来」の遺物として取り残され、忘れ去られた「21世紀」は、墜落炎上し100人余の犠牲者をもってして記憶から蘇る。 こんなはずではなかったと。 我々が子供の頃、夢見た西暦2000年は、たった20機弱のSSTしか飛んでいない「未来」であるはずはなかった。 空はHSSTで溢れ、道路は渋滞のないコンピューター制御されたエアカーが疾走し、月や火星には人類の橋頭堡たる基地が完成し、常に数百人が常駐している。更には海底都市が大陸棚に広がり、夢のエネルギー原子力が総ての者に安定した電力を供給していたはずだった。プライドある正しき文明人が未来を築く時代が保証されていたはずだった。 だが、希望の未来は裏切られ、人間のクズが支配する醜悪な堕落と拝金と絶望に塗れた肥溜のような西暦2000年を迎えねばならぬとはとんだ悪夢だ。 こんな絶望的な西暦2000年に失望し、コンコルドは「自殺」したのかもしれない。 未来と夢の自殺。 次は我々、プライドある皇太子世代男子自身が死を選択する番かもしれぬ。 肥溜の中で虐げられながら生きるよりは潔く死を選ぶ。 コンコルドの墜落は、それを正しき人々に教えてくれたのだ。 死の向こうに本来の正しきあるべき姿の西暦2000年が待っているのかもしれない。
絶望皇太子
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