詩のような 世界
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呼び出し音が鳴り響く
空気の糸が微かに震えている
受話器を取る手に力が入らない
「モシモシ…」
もしもし聞こえますか
助けて欲しいんです
もう痛くて痛くてたまらない
叫び出しそうなんです
この錆びた指は使い物にならないし
胸の中には涙すら流れません
人はなぜあんなにも強いのでしょう
1度希望を失っても
いずれは他の新しい泉を見つける 過去は去ったものとして
見切りをつけて歩いてゆく
でも僕はそうじゃない
過去から始まるのです
だとしたら僕は何者なのでしょう
どうしようもない出来損ないですか
救いをいくら求めても
自分から踏み潰してしまうような
そんな生き方しか知らないのです
もしもし聞こえますか
どうか返事をしてください
お願いだから
貴方さえも僕を見てはくれないの?
静かに受話器を置いた
聞き覚えのあるか細い声に
応えることはできそうもない
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