詩のような 世界

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2003年10月28日(火) 恋人たち


週末になると
僕たちはいつもの待ち合わせ場所へ歩く
何の疑問ももたずに

数時間後には
僕は人形に
あの子は小動物に
なっている

赤い絵筆で描かれた唇は
クスリ、と動き
時には
怒った顔だって表せる

小動物はよく鳴き
毛を撫でてもらいたがる
擦り寄ってくるのは可愛いけれど
僕の硬い手で大丈夫かな


ある日
僕は気づいてしまった
あの子は僕が人形であることに
戸惑いと不満を感じ始めていることに
僕が
小動物であるあの子を
持て余すようになったことに

一緒に呼吸をしているだけで満たされていたはずだ
今の僕たちといえば
なんであなたは人形なの
なぜきみは小動物なんだ
ピーチクパーチクコケコッコー

時間が経つにつれて
僕の皮膚はますます冷たくなり
あの子は
次の餌を求めてすっといなくなった

週末が来ると
少しの疑問とともに
僕は柔らかな毛の感触を思い出す



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