詩のような 世界
目次|←|→
真っ赤なミサイル飛んできた 僕は間一髪でよけた 左足をちょっと上げただけさ
爆風の熱気でドロドロに溶けた生じゃない生クリーム なぜ緑を帯びているのだろう まぁどっちにしても甘いのだから問題ない
崩壊した街を捨てなかったのは 独りぼっちになった女の子を探すためだ
でも無駄だった あるのは垂れ流された血と 喜劇を思わせるころころした肉だけだった
僕は絶望しかけたが 細い声が確かに聞こえてきたので 立ち止まることなどできず
アデナ アデナ アデナ
そう 彼女はアデナという名らしい アデナアデナアデナアデナ
君は悲しんでいるのかい 世界の終わりに呆然としているかい 自分だけが残されて不幸だと嘆いているかい
錆びた土管に アデナの破れたスカートが ふぁさりと掛けられていた
その数メートル先にはアデナの小指が その数メートル先にはアデナの耳朶が その数メートル先にはアデナの太股が まるで分離したのが当然であるかのように落ちていた
僕は気にせず彼女を求めて歩いた きっと「ほんものの」彼女がどこかで縮こまっている
か細い声はまだまだ止まない それが僕の口から聞こえてくるのは アデナと僕が一心同体だからに違いない
|