TENSEI塵語

2002年01月29日(火) 朝の風景

昨日の予報では夜のうちに雪が積もるかもしれないということだったが、
道路が湿っている程度で、何ということもないようだった。
駐車場に着くと、フロントガラスにうっすら積もった雪が凍りついて固まっていた。
お湯をかけてもなかなか取りきることができないほどだった。

長良川沿いの道に入ると、風景はそれまでと一変した。
この道を上流に向かって東進すると、前方にも左右にも山が連なって見える。
その山々のどれもが曇天を背景にほどよい薄化粧をしている。水墨画のような風景である。
前方には、灰色がかった雲の中に円が真っ白に光って浮かんでいる。幻想的な光である。
何やら幽玄の雰囲気に包まれて、脇見運転をしてしまいそうだった。
この川沿いの道の竹藪にはさまれたところは、きょうは大したことはなかったけれど、
大雪の時には雪を載せた竹が傾いて、重厚なアーチを作る。
目が眩むような幻想的な空間に入り込んだ思いにとらわれるところである。

朝、いい風景に出会えるのは嬉しい。
何年か前まで、今よりも遅い時間に出ても余裕があったころなど、
鵜沼から犬山に渡るライン大橋から見える犬山城の景色を見るのが毎朝の楽しみだった。
晴れた朝も雨の朝も曇った朝も霧の朝も、どんな空気の中でもそれぞれに味わいがある。
来て1、2年の間はなかなかこの職場に馴染めず、毎朝些か憂鬱だった。
けれども、木曽川の対岸から眺める犬山城の風景は毎朝の慰めだった。
時には、夕方にも対岸の駐車場に車を停めて眺めたりした。
これは鵜沼の名所なのか犬山の名所なのかと、重大問題のように考えたりもした。


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