TENSEI塵語

2002年04月01日(月) 桜景色のBGM

韻文苦手の私にも、いくらかは好きな和歌・短歌・俳句があるように、
ほんのいくつか、文句なしに好きな詩はあるのである。
桜を眺めているときには、時折、無意識に、心の奥で、
三好達治の「甃のうへ」の流れるような断片が響いていたりする。
それが、桜のある風景に奥行きをもたらしているのかもしれない。


あはれ花びらながれ、
をみなごに花びらながれ、
をみなごしめやかに語らひあゆみ、
うららかの足音空にながれ、
をりふしにひとみをあげて、
かげりなきみ寺の春をすぎゆくなり。
み寺の甍みどりにうるほひ、
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば、
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ。


・・・こうして改めて書いてみると、
何というリズム感、何という美しい響き、何という映像美であろうか。。。

そういえば、この三好達治には「雪」というたった2行の詩もある。

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

この限りない静かさ、無限の空間性、そして、限りないやさしさを、
たった2行の何の変哲もない言葉で表現しうるほどの詩人である。


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